反体制派住民も代表の勝利祈る シリア

ワールドカップアジア最終予選の最終戦。イラン対シリア戦を前に、シリア国内はかなり熱狂しているようです。今回紹介するのは、試合前日、決戦を前に興奮気味の人びとの様子を伝える記事です。AFPが配信し、ハヤート紙(サウジ資本でロンドンで発行されている有力紙)が2017年9月4日に掲載したالحياة – التأهل إلى مونديال 2018.. حلمٌ يوحد السوريينです。

ワールドカップ出場をかけた一戦を前に、多くのシリア国民の気持ちが、祖国の代表の勝利に向け、一つになりつつあるようです。ぼくがフォローしている反体制系のSNSでも、代表の勝利を祈る書き込みが散見されます。

スポーツにスポーツ以外のものを背負わせることについては、慎重であるべきだと思いますが、ここまで事態が動いてくると、第三者であるぼくも、シリア代表に何かを期待したい気持ちになります。

シリア、奇跡の2位通過を祈ります。

アジア最終予選グルーブA順位表(2017年9月4日現在)

チーム 勝点 得失差
イラン 21
韓国 14
シリア 12
ウズベキスタン 12 −1
中国 −3
カタール −6

(2位以内に入ると出場権獲得。3位チームはグループBの3位チームとプレーオフ。勝者はさらに北中米カリブ海予選4位チームとの大陸間プレーオフに回る)


元記事URL http://www.alhayat.com/Articles/23861901/التأهل-إلى-مونديال-2018—حلمٌ-يوحد-السوريين

ワールドカップへ 夢がシリア人を一つにする

掲載紙:ハヤート/AFP
掲載日:2017年9月4日配信

(文中*は訳注 小見出しは翻訳者がつけた)

(http://www.alhayat.com/Articles/23861901/التأهل-إلى-مونديال-2018—حلمٌ-يوحد-السوريينより)

【ダマスカス─AFP】戦争によって体制派と反体制派に引き裂かれてきたシリア人が、この6年間で初めて、一つになった。明日火曜日(2017年9月5日)イランとの決戦にのぞむ母国の代表チームを応援する。勝てば、シリア代表は史上初めて、ワールドカップ本大会への出場権を獲得するかもしれない。

シリア政府最大の支援国と言われるイランに対するそれぞれの立場の違いにもかかわらず、政権軍支配地域の住民も、武装勢力支配地域の住民も、代表チームがイラン戦に勝利することを願っている。

「勝てば無料にします」

ダマスカスでカフェを経営するアリーさんは、今日の早朝、何時間も前から500人以上もの客を迎えるため、最後の準備作業を行っている。客はロシアで行われるワールドカップ2018の出場権をかけたアジア最終予選グループAの最終戦の決戦を観戦するため予約しているのだ。

アリーさんによると、「もしシリアが勝って、ワールドカップへの出場権を獲得したら、お菓子を無料で提供するとお客さんたちに約束した」んだそうだ。

アリーさんは各テーブルの上に小さなシリア国旗を置いた。そして、代表チームの大型ポスターを貼った。ポスターには、「シリアよ…歓喜はきみのものだ」と書かれている。

この店には350人しか収容できないのだが、たとえ立ってでもこの店で観戦したいという大勢の客たちの強い要望を断りきれなくて、とアリーさんは話す。

ワールドカップに出場するには、シリアは厳しい位置にいる。2位の韓国と勝点2差で現在グループの3位、ウズベキスタン(*シリアと同勝点)とは得失点差2をつけている。すでに本大会出場を決めている首位のイラン(勝点21)にシリアが勝利した場合、同時刻に行われる韓国対ウズベキスタン戦の結果によっては、2位となり本大会出場権を得る2位となる。3位になると、アジア・プレーオフに回ることになる。

アリーさんと同様、大勢のシリア人は、2011年以降33万人以上の命を奪った紛争の最中にある国で、政治的立場の違いや経済的な苦境についてはいったん脇において、試合が始まるのジリジリしながら待っている。

前線で歓喜の応酬

政府軍が支配する諸都市では、観光省の取り組みとして、公共の広場に巨大なスクリーンを設置し、イラン戦を放映する準備が進められている。ダマスカスのジャラー・スタジアムやウマイヤド広場でもライブ放送される予定だ。

シリア南部のダルアー県の戦闘の最前線では、シリア軍兵士スウニール・アリーさん(33歳)が、試合をテレビでゆっくりと観戦できるよう、当直当番を代わってくれるよう同僚の兵士に頼み込んだ。

スウニールさんの努力はむだに終わった。それで彼は、イヤホンを買ってきて、ラジオで試合を観戦することにする他なかった。彼はAFPの電話取材に「ぼくはシリア南部で7年間も軍隊にいますが、…ぼくにとって、シリア代表がワールドカップ出場を決めるニュースは、軍隊を除隊になること以上にうれしいことなんです」と話し、こう続ける。

「もし出場権を獲得したら、前線にいる相手側の戦闘員は、ぼくの歓喜の叫びを耳にすることになるだろうね。そして、それを聞いた戦闘員もおそらく「アッラーフアクバル」(*アッラーは偉大なり)という叫びでぼくに返答してくるかもしれないな」

クルド人勢力が町の大部分を支配するハサカ市でも、カフェでは、代表チームのサポーターを迎える支度が行われている。

代表チーム内でも政治的な対立は解消されたようである。すなわち、最近になって、フィラース・ハティーブをはじめ、反体制派支持で知られる複数の選手たちが、代表チームに復帰している。

代表に国民を一つにする力はあるか

武装勢力が支配する地域でも、人びとは、政治的な意味合いではなく、シリアが勝利することを待ち望んでいる。

武装勢力は支配するイドリブ県(シリア北西部)のビンニシュ市で、ギース・サイイドさん(19歳)は「ぼくらはこの代表チームを応援するし、しないこともある」と話し、こう続ける。

「結局、10年後あるいは20年後に、たとえ、このときシリアは出場権を獲得したと言われていているとしても、バッシャール・アサドもしくはアサド体制がワールドカップの出場権を獲得したと言われることは決してないでしょう」

ギースさんは、シリアが入るグループAの複雑な勝敗表について熟知している。彼はシリアが最後の出場枠を獲得するのは、「ぼくらが生活しているような環境のもとでは奇跡」に等しいと見ている。そしてこう続ける。「予選をたたかうチームの存在は、ある人びとにとっては戦争の日常を忘れさせてくれるものとなっています」

ビンニシュ市のクラブに所属するサッカー選手イブラーヒーム・シャーキルさん(19歳)は、政治とスポーツを区別しようとしている。「政治的な面で言うと、ぼくは代表チームには反対の立場です。しかし、スポーツの面で言うと、ぼくはどのチームも、あるいはワールドカップ予選をたたかうアラブのチームも応援しています」と話す。

しかし彼は、「虐殺と殺りく、流血、破壊が行われた今となっては」、代表チームにはシリア国民を一つにする能力なんてないと強調している。

「アサドの代表チームではなく、シリアの代表チーム」

ダマスカスの近郊で武装勢力の拠点となっている東グータでは、住民たちは試合が始まるのをジリジリしながら待っている。カフルバトナ・スポーツクラブ会長のワーフィー・バフシュさん(39歳)は、「人びとはみんな、熱狂してますよ…多くの人たちは早く明日がやってこないかと待ち焦がれています」と言い、こう続ける。

「ここではだれもスポーツを政治に利用しようとは思っていません。わたしの夢は、シリアがワールドカップに出場することです。このチームはアサドの代表チームではありません。それはシリアの代表チームなのです」

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