シリアの戦力強化 キリンカップが転機に

 

シリア代表はどんな困難に見舞われながらワールドカップ初出場に向け、前進してきたか。今回紹介するのは、アメリカのテレビ局CNNアラビア語版が2017年9月4日に配信したخمسة أسباب تجعل من وصول سوريا إلى كأس العالم “معجزة كروية”です。

この記事は、アジア最終予選の最終戦イラン戦の前日に掲載されたものです。

意外に思った点が2つ。一つは、アラビア語版とはいえ、アメリカのメディアの記事なのに、シリア代表チームの活躍を好意的に紹介していること。逆に、シリア反体制派の代表チームに対する立場を、否定的にとらえている印象があります。

ただし記事では、「反体制派」をひとくくりにしています。なかには様々な潮流があり、代表チームに対する見方もばらつきがあると思います。

もう一つは、シリアの戦力強化に、今年6月に埼玉で行われた日本との親善試合(キリンチャレンジカップ2017)が大きく役立ったという指摘です。

それまで、世界のどの国もシリアとの関わりを嫌い、親善試合の依頼を拒絶していました。そのためシリア代表は、強化のための実践的な機会をもつことができなかった。アジア最終予選までコマを進めた代表チームが、強化試合として国内のクラブチームと対戦せざるを得ないなんて、ひどい話です。

そんななか実現したのが日本との親善試合でした。シリアにとっては予選を争う相手と同等かそれ以上の実力を持つチーム(シリアから見ると格上と言えるチーム)と初めて対戦する機会を得、しかもその相手のホームで引き分けた。これが大きな自信となったというわけです。

世界中から避けられているシリアとの試合を、日本サッカー協会が、あえてなぜ受け入れたのか、興味深いところです(何も考えずに、単に直後に当たるイラク戦対策として同じ中東の国を選んだだけというわけではないはずです)。

しばらくは、このブログではシリア関係の投稿が続くと思います。

なお、今回の記事は、まどろっこしい表現(アラビア語らしい表現というべきか)が多く、ところどころ意訳しています。大意は外していないとは思います。


元記事URL https://arabic.cnn.com/sport/2017/09/04/syria-wc-qualifications-iran

 

「フットボールの奇跡」シリアがW杯にたどり着くまでの5つの障害

掲載紙:CNNアラビア語版
掲載日:2017年9月4日

(文中*は訳注 小見出しは訳者による)

(https://arabic.cnn.com/sport/2017/09/04/syria-wc-qualifications-iranより)

ドバイ・アジア首長国連邦(CNN)──サッカーのシリア代表が、ロシアで行われるワールドカップのアジア最終予選で、グループAの他のチームはもちろん、シリアやアジアのサッカーファンたちをも驚かせている。ワールドカップにストレートで出場できる4つのアジア枠をめぐる争いに、シリアが絡んできているからだ。シリアは現在、グループAの3位につけており、あと1勝すれば、夢が実現する可能性があり、悪くてもアジア・プレーオフに進むことができる。カシオンの鷲(シリア代表の愛称)が世界の祭典への出場権を勝ち取るかもしれないという「フットボールの奇跡」を生み出すまで、彼らが乗り越えてきた障害について考えてみよう。

障害1 劣悪な準備事情

シリア代表は、最終予選前半戦から強化練習環境の劣悪さに苦労していた。シリアは、グループAの強豪3チームとの対戦の準備となるような強いチームとの親善試合を組むことができなかった。そのため多くの人びとは、シリアが予選を勝ち抜くことを不可能だと考えていた。

予選に備えて、カシオンの鷲が対戦することができた相手の大半は、マレーシアやシンガボールといった弱小チームだった。その他、首都ダマスカスで行ったトレーニングキャンプでの、国内のクラブチームとの対戦だった。というのも、アジアの強豪国のサッカー連盟は、シリアとの試合を断ってきたからだ。シリアと試合をしてもメリットがないというのが理由だった。イランも対戦を断った国の一つである。

日本はカシオンの鷲との親善試合開催に応じた最初の(*強豪)チームである。試合はシリアが最終予選第8戦の中国戦(2対2の引き分け)を控えた今年(*2017年)6月に行われた。試合は1対1の引き分けに終わったが、シリアの選手たちにとって大きな自信になった。というのも、シリアはアジア2次予選で日本と対戦した際、0−5で惨敗しているからだ。

障害2 脆弱な財政

シリア代表の選手たちは、最終予選で成し遂げたすばらしい戦績に見合うだけの十分な報酬を受け取っていない。6年におよぶ戦争によって疲弊したシリアの脆弱な経済状況のためだ。それでも選手たちは、目的を達成するという強い気持ちと願望を賭してたたかっている。これこそ、選手たちがたたかう唯一の動機なのだ。

シリアはレベルの高い監督の不在という点でも苦労をしてきた。そのため、選手たちは予選の初戦からハンデを負うことになり、多くの勝ち点を失ってしまった。また、代表の中心選手たちは、ダマスカスでは試合用のユニフォームを着たままで練習をしたり(*意味不明)、レベルの高いトレーニングキャンプができないなど、さまざまな困難にも直面してきた。

障害3 中心選手の不在

ここ数年、シリア代表の中心選手は湾岸諸国のクラブチームで大活躍している。たとえば、オマル・スーマ、オマル・フリービーン、あるいは何年も前からクウェートリーグで優秀選手として文字通り名を刻んでいる、フィラース・ハティーブらである。だが、スーマやハティーブは、シリアで紛争が始まって以来、代表チームに選ばれることはなかった。個人的な理由によるものだった(政治的な理由からだと推測する人たちもいる)。彼らの不在は代表チームの攻撃力に否定的な影響をもたらした。

スーマとハティーブが最終予選の最後になってチームに復帰すると、状況は大きく変わった。この二人の主力選手不在でたたかった最終予選の前半戦、シリアは5試合で1ゴールしか奪えなかったのが、後半戦では4試合で6ゴールをあげている。

障害4 全試合アウェーでのたたかい

シリアはホームゲームをシリア国内で行うことを禁じられているため、マレーシアで開催している。そこでは劣悪なピッチ状態に苦しめられ、また選手たちは、スタンドにほとんど観客がいない状態でプレーすることにも苦労している。これらのことは、同グループの他のチームにはない不利な条件だ。

サッカーにおいて、ホームゲームとそこでのサポーターの応援は、勝利するための最も重要な要素とされている。だが、シリア代表は、こういった障害も、強い気持ちで乗り越えてきた。

障害5 分断された国民

代表選手の多くは、シリアの反体制派からの厳しい非難にさらされている。反体制派は、代表チームが、さまざまな立場の国民を代表しているのではなく、政権を代表したチームだと見なしているためだ。これは、シリア代表はさまざまな立場の国民全体を代表している、と考える人びとが拒絶している見解である。

メディアやサッカー関係者の間に見られるこういった意見の対立は、選手たちに余計なプレッシャーを与えている。選手たちは、勝っても負けても、試合が終わるごとに罵倒や批判を受けるようになった。それでも、彼らは忍耐強く、集中力や強い精神力を切らしていない。そして、かつて誰もできなかったことを成し遂げるために、政治的な抗争からは距離を置いている。

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