女性のサッカー観戦を求めるたたかい イラン

イラン
(http://www.alquds.co.uk/?p=791409より)

先日の投稿で、テヘランで行われたイラン対シリア戦の試合会場には、何人かのイラン人女性が入場して観戦したことを紹介しました(「オフサイド・ガールズ」2017 イラン対シリア)。ところが、このときスタジアムには、当局の正式な許可を得て観戦していたイラン人女性が複数いました。今回紹介するのは、ロンドンで発行されているアラビア語の有力紙「アル=クドゥス・アル=アルビー」が2017年9月16日に掲載した、مطالبة واسعة في ايران بالسماح للنساء بدخول ملاعب كرة القدم! | القدس العربي Alquds Newspaperです。

特別許可は、イランの女性国会議員限定で出されていました。興味深いのは、女性議員のなかでも、特別許可をめぐって意見の相違があることです。国会議員だけ許可されたことに何の意味があるのかと反対する人たちがいる一方、1979年のイスラーム革命以来初めての出来事なのだから、一歩前進ととらえるべきだという人たちもいます。面白いのは、記事に出てこないだけかもしれませんが、女性がスタジアムでサッカーを観戦するなんてとんでもないことだ、と考える女性の意見は出てこないことです。

また、イランにおいて、女性にサッカー観戦させろと求める動きは、単なる思い付きからではなく、試合のたびごとにくり返されていることも、この記事からうかがえます。

今後大きな政変でもない限り、イランのスタジアムに女性の入場が認められるのは、そう遠くない未来のことなのではないでしょうか。

ところで、ぼくは、ドイツでブンデスリーガの試合を何試合か現地で観戦したことがあります。どのスタジアを訪れても雰囲気がとてもすばらしいですね。設備もサッカースタジアムとして考えぬかれており、ピッチからかなり遠い席からでも、臨場感をもってゲームを見ることができるつくりになっています。

それ以上にいいのは、大勢の観客がつくりだす高揚した、緊張感あふれる雰囲気。一度このエンターテインメント空間を体験したら、病みつきになってしまいました。ここ数年はシーズンに1回は生観戦しています。Jリーグのスタジアムとはすべての点において違いを感じます。

ただし、Jリーグの方が断然いいと感じる点もあります。女性や子どもの観客の多さです。もちろんブンデスリーガの試合で、女性や子どもの姿を見かけるのはめずらしいことではありませんが、Jリーグと比べるとその比率は圧倒的に少ないです。

女性と子どもの比率の高さは、ドイツのスタジアムのような緊張感をやわらげている要因となっているのかもしれませんが、しかし日本独特の明るくて、やさしい雰囲気、リラックスしてゲームを楽しめる雰囲気は、日本の誇るべき特徴だと思います。

逆に、現在のイランのように、男だけのスタジアムになってしまったら、乱暴で殺伐とした雰囲気になるように思います。


元記事URL http://www.alquds.co.uk/?p=791409

女性のサッカー観戦を認めろ! イランで広がる要求

掲載紙:アル=クドゥス・アル=アラビー
掲載日:2017年9月16日

(小見出し、*の箇所は訳者による)

(http://www.alquds.co.uk/?p=791409より)

ハッキングで主張「入場を認めろ」

テヘラン─《アル=クドゥス・アル=アラビー》:サッカースタジアムへの女性の入場を認めることを求める声が、イラン国内で高まっている。その声は、とくに、10日ほど前、テヘランのアザディー・スタジアムで行われたワルドカップ予選のシリア戦の後、大きくなってきている。この試合ではイラン議会の複数の女性国会議員がスタジアムで観戦していた。

この要求運動は、イランの首都にある最も有名なスタジアムのウェブサイトのメインページに、最もわかりやすい形で現れた。ハッカー(*アラビア語で「海賊」を意味する単語なんですが、おそらくハッカーのことではないかと思います。たぶん)によってサイト内に侵入され、「イランの女性たちにスタジアムに入場する許可を与えろ」というスローガンが掲げられたのだ。

革命以来初めて認められた観戦

アザディー・スタジアムで行われた、ワールドカップ2018のアジア地区予選、イラン対シリアの一戦は、6年もの間血みどろの紛争にさいなまれているシリアの代表チームが、試合終了間際に2対2となる同点ゴールを決めたことで、シリアはアジア・プレーオフに進出し、同国史上初となるワールドカップ出場への望みをつないだ試合として、おそらく人びとの記憶に残るものとなるだろう。だが、この試合は、先に述べたとおり、スタジアムの観客席に少なくとも2人の女性国会議員が入場するという、女性たちにとっては、1979年のイスラーム革命以来の出来事となった。

イラン学生通信は、アザディー・スタジアムのウェブサイトがハッカーによって侵入され、サイトのトップページに数時間にわたって、「イランの女性たちにスタジアムに入場する許可を与えろ」と書かれたバナーが掲載されたと発表、また、スポーツ省が、タイイバ・スィーヤーウィシュ議員(*女性)の求めに応じて、この試合を観戦する特別許可を女性議員らに与えた、と付け加えた。

スィーヤーウィシュ議員はこのことについて次のように述べている。「試合観戦のためアザディー・スタジアムにわたしが入るのは初めてのことです。女性もこういった権利を要求することができるのです」

意見分かれる「特別許可」

だが、別の女性議員たちは、スィーヤーウィシュ議員のこの試みに反対している。ブルワーニ・サラーフ・シューリー議員は改革派の新聞「シャルク」の取材に対し、「現状では、この国の女性たちがスタジアムに入るために、男に変装する以外他に選択肢がありません。わたしだけ、女性たちの代表として特別許可を得て、スタジアムに入りたいとは思いません」との考えを明らかにし、「女性たちみんなが行くことができるようになったときに、わたしもスタジアムに行きたいと思います」と話した。

スィーヤーウィシュ議員自身は、(*要求実現に対する)進展の兆しだとして、特別許可を受け入れた。同議員は「イウティマード」紙の取材に、「わたしは、今回の当局の許可は、法律に基づく私たちの要求の結果だと考えています。この目的を達成するため、わたしはスタジアムに行きました」と話している。

また、「タスニーム」紙によると、マスウード・スルターニー・スポーツ大臣は、改革を拡大していく可能性を示唆し、「スタジアムで家族で観戦できるような方法の検討を行う予定です。関係方面と協議、調整しているところです」と述べ、こう強調している。「わたしは、サポーターたちが彼らに課せられるルールを尊重してくれるものと確信しています」(*スタジアムに家族専用座席を設置したら、観客もよく協力してくれると思っているという意味か)

女性の観戦禁止「不面目なことだ」

イラン当局は、外国人女性に対しては、試合観戦を認めている。アザディー・スタジアムでのイラン対シリア戦のスタンドで、母国の旗を振り回していたシリアの女性サポーターがいたのはそのためだ。イランのマスコミもこのことに注目した。

なかでもイランのテレビ局の中継で一人の解説者から注目すべきコメントが発せられた。彼は、イランの女性たちが入場を禁じられているのは、「不面目なことだ」と強調したのである。

イラン当局は、女性が、サッカーをはじめ男子スポーツをスタジアムで観戦することを禁じている。スタジアムの雰囲気やサポーターたちの不品行な振る舞いから女性を守るためだと、このことを正当化している。

ときおり、試合が行われているスタジアムの外で、女性たちが抗議のため集まっている。彼女たちの何人かは、入口を乗り越えてスタジアムに忍び込んだりしている。

「技術上のミス」?

ハサン・ロウハニ大統領は、今年5月の再選された大統領選挙の公約で、女性の権利拡大に取り組むと約束した。だが、大統領は、閣僚に誰一人女性を任命しなかったとして、改革派からの批判にさらされている。これに対し、大統領支持派は、それは保守派との直接的な対決を回避するためだ、と言い訳し、閣僚以外のポストには大勢の女性を登用していることに注目して欲しいと言っている。

アザディ・スタジアムのウェブサイトでシリア戦の観戦チケットが女性向けにも販売されたとき、イランの女性サポーターの中に、とてつもない驚きと歓喜が広がった。ところが担当者が急ぎ確認したところ、「技術上のミス」だったとして、チケット代金の返金を行うことになった。

スポーツにおける女性の課題は、たいへん不安定なまま残されている(*意味不明)。2014年、当局は、男子バレーボールの試合への入場を禁止するとして、女性たちを驚かせた。バレーボールはこの国でとても人気のある競技である。当局は観客席に特別エリアを設け、2年後には入場を許可するとした。同様に、試合会場に特別エリアを設けることで、バスケットボールの女性の観戦も認めている。

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