FIFAはシリア代表をどう見たか

今回紹介する記事は、FIFA(国際サッカー連盟)のホームページに2017年10月12日に掲載された、シリア代表のアジア予選でのたたかいを概括したسوريا بين نهاية الحلم والمستقبل الواعد – FIFA.comです。

記事のタイトル「夢の終わりと約束された未来」から想像できるように、このチームのたたかいぶりをとても好意的に紹介しています。また、代表の快進撃がシリアの人びとに与えた影響についても、「この国の国民を分断してきた壁を壊すという、不可能なことをもなし得」たと賛辞をおくっています。

もちろん、ホームページに掲載された記事といっても、これがFIFAの公式見解というわけではないでしょう。ただし、本ブログでも何度か触れてきたとおり、国内外には現在の代表チームを冷ややかに見る声も一定数ある中、FIFAとしては、全体として肯定的にとらえていると言えると思います。ぼくもこの見方に賛成します。

なお、今回の記事を読み始めた時点では、FIFAのホームページにはアラビア語での記事しか掲載されていなかったのですが、投稿する前、確認してみると、いつの間にか英語による記事も掲載されていました(Syrian dream ends but heralds bright future – FIFA.com)。

ですので、いつものことですが、英語ができる方は英語版記事をお読みになる方が正確かと思います。ただし、アラビア語版とは微妙に違った内容になっているみたいです。


元記事URL http://ar.fifa.com/worldcup/news/y=2017/m=10/news=سوريا-بين-نهاية-الحلم-والمستقبل-الواعد-2913672.html

夢の終わりと約束された未来 シリア代表

掲載紙:FIFA.com
掲載日:2017年10月12日

(文中の*訳注)

(http://ar.fifa.com/worldcup/news/y=2017/m=10/news=سوريا-بين-نهاية-الحلم-والمستقبل-الواعد-2913672.html
より)

ロシア・ワールドカップをめざすシリア代表の夢は、アジアプレーオフ第2戦で、アジアチャンピオンのオーストラリアに敗れたことで、終わった。オーストラリアが「カシオンの鷲」(*シリア代表の愛称)を倒し、2018年のロシアに到達するためには、延長戦までたたかわなければならなかった。

本当に、シリア代表は、2011年以来続き、多くの犠牲者を出している戦争で分断されてしまった多くのシリア国民にとって、喜びの源泉だった。そして、予選の間、代表チームを大勢のサポーターたちが応援する姿は、サッカーが、この国の国民を分断してきた壁を壊すという、不可能なことをもなし得ることを証明してみせた。

タイムアップ数十秒前のオマル・スーマのフリーキックがゴールポストの左を外れ、オーストラリアに敗れたことは、厳しい結末である。だが、このアジア予選でみせた見事なたたかいぶりは、代表チームの未来を明るいものにしている。4年後、中東地域で初めて開催されるワールドカップで、「カシオンの鷲」は、さらにすばらしいパフォーマンスを見せてくれるにちがいない。

夢の旅路

アジア予選をたたかうシリア代表の旅路は、2次予選から始まった。抽選によりシリアは、強豪日本、シンガポール、アフガニスタン、カンボジアとともに、グループEに入った。シンガポール、アフガニスタン、カンボジアにはホーム、アウェーともに勝利し6勝をあげ、実力があることを示した。ただし、日本とは2戦とも完敗だった(マスカットでの初戦は0−3、東京での第2戦は0−5)。

ただし、日本に続きグループ2位で3次予選に進出したものの、コーチ陣の変更が行われた。2次予選を指揮したファジル・イブラヒーム監督に代わって、アイマン・ハキーム監督と契約したことが発表された。

ハキーム監督は、昨年(*2016年)10月初め、FIFA.comの単独インタビューで次のように話している。

「われわれが選手と築いた強い決意と自信は、われわれを取り巻く環境にもかかわらず、好成績を残したことで、大きなものとなりました。選手たちには、よい結果を成し遂げることができる力をもっていることを証明しようという強いモチベーションがあります。われわれはシリア国民として、選手として、目標に到達する力があることを確信しています」

実際のところ、ハキーム監督は、3次予選から4次予選(*アジアプレーオフ)に進出したことで、彼とシリア代表が、この希望と大志を成し遂げられるだけの力があることを証明してみせた。「カシオンの鷲」は、3次予選のグループAで3位の座をもぎ取り、オーストラリアとのプレーオフをたたかい、ワールドカップまであと数メートルの地点にまで立ったのである。

次は何を?

予選敗退と夢の消滅にもかかわらず、シリア代表は、数百万人ものシリア国民の胸に、歓喜をもたらすことができた。代表チームのもとに心を一つにしたシリアの人びとの結集は、アイマン・ハキームの息子たち(*選手たち)が成し遂げることを願っていた、より崇高な「ゴール」である。

2018年のロシアへの旅が終わったオーストラリア戦のあと、ハキーム監督は話している。

「チームは大きな結果を出すことができました。シリアのみなさんに喜びをもたらすため、最後の瞬間まで、大陸間プレーオフに進出してなんとか夢を握りしめようとしてきました。われわれは祖国の代表チームのもとで、国民の心を一つにしました。しかし最後、喜びはわれわれのもとにはやって来なかったのです」

たしかに、喜びは完全なものではなかったかもしれない。だが、シリアの人びとは、ロシア・ワールドカップ予選で、彼らの代表が厳しいたたかいをたたかい抜く力をもち、目覚ましい成績を達成したこと、そして、2022年のカタールで行われるワールドカップに出場するという、これまで不可能だったことを成し遂げるだろうという希望を証明してみせたことを、誇りに思うことができるはずだ。

注目の選手

オマル・スーマが数年のブランクを経て代表に復帰したことは、シリアで反響を呼び、またチームにとって大きな攻撃力アップとなった。サウジアラビアのアル=アハリーに所属するストライカーは、オーストラリアとのプレーオフ第1戦で、終了間際にゴールを決め、第2戦でも3試合連続となる先制ゴールをたたき込んだ。近年において、スーマがアジアで最も優れたストライカーの一人であることを証明してみせた。

スタッツ

20。これはシリア代表が、ロシア・ワールドカップ予選でたたかった試合数である。2015年6月に始まったこの長い旅路において、合計で9勝5引き分け6敗という成績を残した。

フリーライター/書籍編集者。アラビア語学習者。サンフレチェ広島とザンクト・パウリ(ドイツ)を愛す。シリアに平和が戻れば、アル=ジハードというちいさなクラブを追っかける旅をしてみたいと思っている。趣味はシーカヤック。京都市在住。

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