日本への影響大か イラクでの国際試合禁止措置解除

イラク
(https://www.sports-leb.com/2018/03/17/العراق-يحتفي-بعودة-تاريخية-للمباريات/より)

イラクでは長く国際試合の開催をFIFAによって禁じられてきました。それが先月(2018年3月)、数十年ぶりに解除されました。ただし、全土でというわけではなく、FIFAが治安状況が比較的安定していると判断した、バスラ、カルバラ、アルビルの3都市に限ります。

これにより、日本も、ワールドカップ予選などで対戦する際、イラクまで遠征することになります。今回解除されたのは公式戦。すでに、親善試合に限ってイラク国内での開催は認められており、ネットを通して試合の映像を見ることができますが、親善試合にもかかわらず、その熱狂ぶりがすごいこと。中東ではサッカー熱が高いとはいえ、湾岸諸国のスタジアムでは観客がそれほど熱狂しているようには感じません。しかし、イラクサポーターの熱狂ぶりは相当なものです。今後イラクは、日本にとってさらに手強い相手となりそうです。

記事中に出てくるAFCカップについて、日本ではなじみのない大会なので、一言注釈を加えておきます。

アジアのクラブチャンピオンを決める大会といえば、AFCチャンピオンズリーグですが、これはアジアサッカー連盟のクラブランキングの上位14か国・地域のチームにしか出場権がありません。15位から28位の国・地域のクラブチームによる大会がAFCカップです。アジアで15位以下といっても、イラクのほか、シリア、ウズベキスタンといった代表レベルではワールドカップのアジア最終予選に進出する国のクラブも参加していますので、簡単な大会というわけではなさそうです。

今回の記事は、レバノンのネットメディアに掲載された記事ですが、おそらくAFPの配信記事だと思います。

(下の写真:先月末イラク・バスラで行われた国際友好大会のイラク対カタール戦を観戦するためスタジアムに向かうファンたち)Embed from Getty Images


元記事URL:

العراق-يحتفي-بعودة-تاريخية-للمباريات/

苦節数十年、イラクでサッカーの国際試合の「歴史的」復活祝う

掲載紙:スポーツ・レブ・ドットコム
掲載日:2018年3月17日

(*は訳注 小見出しの一部は訳者によるもの)

イラクでは土曜日(*2018年3月17日)、イラク国内で国際試合の公式戦開催を許可する国際サッカー連盟(FIFA)の「歴史的」決定にわいた。イラクでは過去数十年にわたって治安問題や政治的不安定さに悩まされ、FIFAにより数十年にわたって国際試合開催が禁じられていた。

クウェート侵攻以来の措置

FIFAは、1990年代からイラクにおいて国際試合の開催を禁じる措置を課してきた。イラクでは、クウェートへの侵攻から2003年のアメリカによるイラク攻撃に至るまで、厳しい治安環境が続いていた。また、その後も2014年まで治安状況が崩壊し、イスラーム国が伸張していた。

イラク当局はこの数か月、とくに、イスラーム国に対する「勝利」宣言(*2017年12月9日)の後、この禁止措置の全面解除に向けて最大限の努力を行ってきた。これにより、FIFAは昨年(*2017年)、措置を緩和し、バスラ、カルバラ、アルビルにおいては親善試合の開催を許可した。そして、FIFAは金曜日(*2018年3月16日)、上記3都市において、国際試合の公式戦開催を許可することを発表した。

解除後イラクで開催される最初の公式戦は、来月(2018年4月)行われるAFCカップの試合となる予定だ。またイラクでは今月、イラク、カタール、シリア代表の参加で、「国際友好大会」が開催されることになっている。

歴史的決定

FIFAの決定に関し、イラクサッカー連盟は、「苦節数十年、清らかな祖国のもとについに正義の時がやってきました。この決定はわれわれスポーツ界を再びそれにふさわしいレールに戻すものです」ととらえた上で、こう述べている。

「この歴史的機会にあたって、われわれはアッラーとファンのみなさんに誓います。われわれは決して後戻りすることはありません。そしてとりわけ首都バグダッドなど、他の地域のスタジアムにも今回の措置が導入されるよう、全力と尽くします」

イラクサッッカー連盟のアリー・ジャッバール副会長はAFPの取材に対し、「われわれはこの歴史的決定を長い間待っていました。決定は国民のみなさんが成し遂げた大きな成果であり、長い苦難の末得たものです」と話し、こう付け加えた。

「われわれはこの成果を強固なものにしなければなりません」

バグダッドの解除は持ち越し

決定は金曜日(*2018年3月16日)の夜、FIFAの委員会終了後、コロンビアのボゴタで、ジャンニ・インファンティーノ会長によって発表された。

インファンティーノ会長は、「イラクについてですが、われわれは本日、昨年までに親善試合の開催を認めた3都市、すなわちアルビル、バスラ、カルバラにおいて、国際試合の公式戦を開催することを認める決定を行いました」と述べた。

しかし、同会長は、FIFAはバグダッドでの国際親善試合開催許可を求めるイラク側の要請については、さらなる検討が必要だとして、却下したことも発表した。イラク側がこの要請がなされたのが「遅かった」からだという。

決定を受け、イラクのハイダル・アバーディー首相は国民を祝福した。同首相は、決定は、「イラクの治安が安定していることと、イラクがあらゆる分野で成し遂げてきた成果の結果だ」ととらえ、「禁止措置が全面解除されるまで、引き続きあらゆることをやっていこう」と呼びかけた。

「イラクの信念の勝利」

FIFAは過去にも国際試合開催禁止措置の解除をしたことがあったが、ごく短期間で元に戻していた。2012年、措置解除した後の最初の試合において、スタジアムが停電するという出来事が起こったためだ。だが、イラク当局はその後も、近代的設備を備えたスタジアムの建設や改修など行い、国際試合を開催する能力があることを示そうと努力を重ねてきた。

イラクは昨年の禁止措置の一部緩和の後、親善試合を数試合か行い、治安状況や運営能力が改善していることを示してきた。とりわけ今年2月28日にバスラで開催されたサウジアラビア代表との試合がそれだ。ザ・グリーン(サウジ代表)がメソボタミアの地で試合をするのは1979年以来のことだった。

この試合にはアジアサッカー連盟のシャイフ・サルマーン・ビン・イブラーヒーム・アール・ハリーファ会長も臨席した。同会長は、イラクでの国際試合開催復活を支持する有力者の一人である。

土曜日(*2018年3月17日)発表した声明の中で、アール・ハリーファ会長は、FIFAの決定を「イラクの堅固な信念の勝利だ」と評した。

また、同会長は、イラクの人びとが「国際試合開催のため、国際基準にもとづく、理想的なスタジアム整備など、最大限の努力を払い、また治安とロジェスティック両面において、試合運営のために細部にわたる調査にもとづく計画を実施した」ことを強調した。そして、こういったことは、国際基準にもとづき国際試合の公式戦か開催するための施設整備の大きな指針となるものである、と述べた。

さらに、シャイフ・サルマーン会長は、イラクとサウジの試合は、「イラクが国際試合を開催する必要条件を備えていることを示す明確なメッセージ」になったとみている。

サウジアラビアの公的スポーツ団体のトルキー・アール・シャイフ会長は、イラクに対し祝意を表した。同会長はツイッターを通して、「イラクのスタジアムでの試合開催禁止措置を解除するFIFAの決定に際し、イラクの同胞のみなさんを祝福いたします。メソポタミアの地とイラクのすべてのスポーツ選手のみなさん、おめでとう」と述べた。

イラクスポーツ省のアブドゥル・フセイン・アブターン大臣は、先月(*2018年2月)、AFPの取材に対して、禁止措置解除に向けた後押しとなるよう、イラクは湾岸諸国、とりわけサウジアラビアの政治的支持を期待していることを強調していた。

アブターン大臣は、金曜日(*2018年3月16日)発表した声明の中で、「スタジアムの整備や新しいスポーツ施設の建設など、これからも引き続き努力を続けていくことを、われわれを支援してくれた同胞、友人のみなさんに」約束すると述べている。

帰ってきた「サッカーのある暮らし」

アジアサッカー連盟のシャイフ・サルマーン会長は、「今回のバスラ、アルビル、カルバラの3都市での禁止措置解除が、近い将来、首都バグダッドのスタジアムでの措置解除に向けた一歩となること」を期待し、「この件に関して必要な協力を行うため、できるだけ早く」バグダッドを訪問する考えを表明している。

アジアサッカー連盟の担当者によると、AFCカップでザウラーSCとクーワ・ジャウィーヤが対戦するマナーマとマーリキーヤ(ともにバーレーンのクラブチーム)の2試合が、「国際試合開催の禁止措置解除後の最初の公式戦」になる予定だという。

アジアサッカー連盟は当初、この2試合を3月(*2018年)にイラクで開催することを承認していたが、禁止措置を理由とするFIFAからの要請を受け断念していた。「FIFAの禁止措置解除を受け、イラクの両チームがホームで、サポーターの前で試合をするという利点を生かすようにするため」、試合を4月(*2018年)に開催することになっている。

イラク代表のバーシム・カーシム監督は、この試合開催は、「イラクサッカーの進路における歴史的転換点」になるかもしれないとし、AFPに対しこう付け加えている。

「年代ごとの各代表チーム、クラブチームはそれぞれのホームで試合することになります。これはイラクサッカーにとって新たな進路を作り出すかもしれません」

イラクのサッカーファンたちは公式戦復活について、喜びを隠せない。「イラクのスタジアムで禁止措置解除」というハッシュタグが、ツイッターを通して広範囲に拡散されている。

ワリード・アハマドさん(*ツイートしたファンの一人だと思います)は、今回の決定は、「われわれは文明と歴史を持つ国民であるとのFIFAからのメッセージです。われわれは決定を喜んでいます。われわれには、試合を運営し成功させるあらゆる手段も能力もあるのです。サッカーのある生活が帰ってきたんです」と話している。

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