今回紹介する記事は、アルアハラーム・スポーツオンラインが2016年12月18日に配信した、イラク国内リーグで、クルド人を侮蔑するヤジが叫ばれた問題に関するもの。またしても殺伐とした内容のイラクの記事ということになります。
今年12月17日にアルナジャフというチームが、ホームでアルビルというクルド系のチームと対戦、ところが、試合中アルナジャフのサポーターが「ペシュメルガはイスラム国だ」というヤジを叫んだというのです。ペシュメルガは、イラクのグルド自治政府が保有する軍事組織で、現在イラクのイスラム国最大の拠点であるでモスル奪還に向けた戦闘にも参加しています。
このヤジに対して、アルビルの選手たちはプレー続行を拒否、試合は一時中断されました。その後再開されましたが、この事件を受け、アルビルとやはりクルド自治州内に本拠を置くザーフーの2クラブは、リーグからの脱退を宣言するに至っています。
記事は、事件を受けて、イラクサッカー連盟がアルナジャフに対して下した処分に関するものです。
この件については、日本語でネット記事も出ています。試合の動画も掲載されていますが、肝心のヤジについては聞き取れません。
(イラクリーグ、クルド系の2チームが撤退…「ISの手先」との野次で)
この動画を見て意外に思ったのは、スタジアムにはけっこうな観客が詰めかけているということです。収容観客人数がわずかなスタジアムのようですが(せいぜい数千人ほどか)、それでもぎっしり人で埋まっています。イラクというとシリアと同様、治安状況にかなり問題があるイメージが強いのですが、これだけの観客の入場が認められているというのは、地域によってはかなり安定しているということなのでしょう。
なお、イラクの国内リーグ、イラク・プレミアリーグは現在20チームで構成されています。イラク代表はアジアでもトップレベルの成績を誇っていますが、クラブチームは、アジアサッカー連盟のリーグに対する査定により、低位に位置付けられています。そのためイラクのクラブチームがアジア・チャンピオンズリーグに出場することもなく、日本ではまったくなじみのないリーグとなっています。
今回記事に登場するアルナジャフは上位争いに加わっているようですが、アルビルは中位、ザーフーは最下位争いに巻き込まれているようです。
(Live Scores – National League – Iraqi League – FIFA.com)
元記事URL:
http://sport.ahram.org.eg/News/231483/0.aspx
アルナジャフのホームゲーム禁止処分 イラクサッカー連盟
2016年12月18日
アルアハラーム・スポーツオンライン(エジプト)
イラクサッカー連盟懲罰委員会は、アルナジャフに対しホームスタジアムでの4試合の開催を禁じる処分を決めた。昨日(2016年12月17日)行われたイラク・プレミアリーグのアルビル戦で、クルド人をイスラム国(ダーイシュ)にたとえる侮蔑的なヤジが叫ばれ、また、試合終了後アルナジャフのサポーターがピッチに乱入したことを理由とするものだ。
連盟懲罰委員会のタハ・ハラーティフ委員長は本日(土曜)、メディアの取材に対し、アルナジャフ・アルビル戦のマッチコミッショナーのレポートを検討するため緊急の会議を開き、無観客でホームゲーム4試合をホームスタジアム以外で行う制裁を課すことを決めたと述べた。
同委員会はアルナジャフ・クラブの運営責任者に対し強い調子で警告し、試合会場の安全性確保に関して、連盟はアルナジャフの会長と協議するよう勧告した。また、アルナジャフのアシスタントコーチ、ハイダル・ジャッバールを1試合の退席処分にすることも決めた。
イラクサッカー連盟は本日、すでにアルビル戦でのアルナジャフのサポーターには処分を課さないことを発表しているが、イラク南部の都市ナジャフで開催された試合で観客が発したヤジの内容は、イラクやサッカーの歴史とは関係のない外部から持ち込まれた文化に影響されたものであり、祖国への侮辱であると、激しく非難した。
クルド自治州内の都市をホームとするアルビルとザーフーの2クラブは昨日(つまり試合当日)、アルナジャフのサポーターからクルド人とペシュメルガに対して民族差別的なヤジが発せられたことを理由に、イラク・プレミアリーグからの脱退を宣言している。ヤジはクルド人とペシュメルガをテロ組織のイスラム国にたとえるものだった。試合中、審判はアルナジャフのサポーターのこのヤジを理由に試合を一時中断した。試合は再開され、アルナジャフがアルビルに1対0で勝利した。