アジアサッカー連盟(AFC)がシリアの人気クラブ投票結果を発表しました。今回紹介する記事は、投票に先駆けてAFCのホームページに掲載された記事です。
投票結果は以下の通りですが、今回の記事で興味深いのは、シリアのジャーナリストの指摘です。シリアサッカーの強化は、ジャイシュ中心に行われてきたこと、これまで人々は地元クラブを応援することが常だったが、テレビ中継の増加、シリアのクラブチームが国際大会で好成績を挙げるようになったことにより、とくに若い世代の中では、地元クラブかどうかに関係なく、タイトル争いに絡むかどうかで応援するチーを決めている人が増えているとのことです。
なお、今回の記事、後半部は読解にえらい苦労しました。かなり荒っぽいです(間違っているかも)。
AFCによるシリア人気クラブ投票結果
投票数;約8万8000
1位 イッティハード(アレッポ)得票率47%
2位 カラーマ(ホムス)同27%
3位 ワフダ(ダマスカス)同25%
4位 ジャイシュ(ダマスカス)同1%
シリアの人気クラブ
掲載紙:afc.com
掲載日:2020年5月1日
URL:
https://ar.the-afc.com/competitions/afc-cup/latest/news/most-popular-clubs-syria?fbclid=IwAR02Feq8uFGyPzwpvLuNa86xqV5b5gP3xpFLm4ErQ3m8qeQ-mBK_7WNCyNM
(*は訳注)
【ダマスカス】シリアサッカーは、国内クラブ間の高い競争力を背景に、西アジア地区において大きな存在感を示している。同国の人気ナンバー1のスポーツは、サッカーに命をかけるサポーター集団を組織する熱狂的なファンを獲得している。
アジアサッカー連盟(AFC)のウェブサイトでは、西アジア地区で高い人気を誇るクラブチームに関する連載を企画しているが、今回はシリアで最も人気を持つクラブを取り上げたい。
今回のレポートでは、調査やシリアの複数のスポーツジャーナリストのコメントをもとに、過去のタイトル獲得数と観客動員数の両面で人気の高いクラブ、すなわち、ジャイシュ、カラーマ、ワフダ、イッティハードの4クラブに焦点を当ててみた。
なお、シリアのサッカーファンのみなさんは、インターネットを通してシリアの人気クラブ投票に参加することができる。投票締め切りは(*2020年)5月7日午後10時(ダマスカス時間)まで。
カラーマ
シリアの最も偉大なクラブの一つ。同国のサッカー界において際立った位置を占めるクラブだ。リーグ、カップ戦での優勝各8回。これらが、クラブを支えるサポーターたちの独特のアイデンティティー形成を生み出している。
カラーマSCは1928年創立。当時はハーリド・ブン・ワリードという名称だったが、1971年、チームの本拠地ホムス市で活動するいくつかのクラブが統合され、カラーマというクラブ名となった。
カラーマのサポーターたちは、2006年のアジアチャンピオンズリーグのことを強く記憶している。優勝まであと一歩のとこまで迫ったシーズンだった。サポーターたちの夢は、韓国の全北現代が決勝でカラーマを下したことで潰えた。全北は、韓国で行われた第1戦は2−0で勝利、シリアで行われた第2戦は1−2で敗れたものの合計スコア3ー2でカラーマを上回った。
カラーマは2009年シーズンも運に恵まれなかった。この年のAFCカップ決勝で、クウェートのアルクウェートに1−2で敗れた。
ジハード・フセインはカラーマの最高の選手の一人と言われる。チームはジハードとともに多くの好成績を残した。ジハードは、2006年から3年連続で、シリア最優秀選手に選ばれている。また、クラブは多くのすぐれた選手を輩出している。ターミル・ルーズ、アブドゥル・ナーフィウ・ハムウィーヤなどで、彼らはクラブの歴史を築き上げた。
イッティハード
イッティハードはシリアサッカー界において大きな地位を占めてきた。リーグタイトルを6回獲得した。カップ戦でも9回優勝しているが、これはジャイシュと並んで最多優勝記録である。
イッティハードSCは1949年創立。アレッポ市を代表するクラブである。大勢のすぐれた選手を輩出しており、たとえば、ギリシャのプロチームでプレーし、のちにイッティハードの会長に就任したムハンマド・アフシュや、アニス・サーリー、ムハンマド・ジャカラーニなどがいる。
2010年、イッティハードはAFCカップで優勝し、再度シリアサッカーをアジアの舞台に押し上げた。決勝のクウェートのカーディシーヤ戦では、90分終了して1−1と決着がつかず、PK戦となり4−2で制したが、優勝は順当な結果だった。
ワフダ
ワフダSCは1928年ダマスカスで創立。シリアサッカー界に長年にわたって多くの人材を送り出している。今世紀に限ってみても、2003/2004、2013/2014シーズンに計2回リーグタイトルを、カップタイトルも7回獲得している。
ワフダは2004年、シリア勢どうしの対決となったAFCカップ決勝でジャイシュに敗れ、優勝を逃している。決勝の第2戦(*ジャイシュのホーム)ではクラブ史上最高のヒーローの一人、ナビール・シャフマのゴールにより1−0で勝利したが、ジャイシュをホームに迎えた第1戦では2−3で敗れていたため、(*アウェーゴールの差で)タイトル獲得はならなかった。
ワフダからも多くのすぐれた選手が出ている。シリア代表の元キャプテン、ニザール・マフルースや、アサーフ・ハリーファなどだ。また、著名なFWで絶大な人気をほこったマーヒル・サイイドもいる。同選手は、初のリーグ優勝に貢献するなどチームに多くの栄光をもたらした。現在はクラブ会長をつとめている。
ジャイシュ
ジャイシュはリーグ優勝17回など最多タイトル獲得クラブである。2015年からはリーグ5連覇中だ。カップ戦優勝も9回しており、文字通り、国内クラブのリーダーの地位にある。
ジャイシュSCは1949年ダマスカスで創立。2004年のAFCカップで優勝し、シリアのクラブとして初めて、アジアの大会のタイトルを獲得している。
2004年のAFCカップでは、ジャイシュは決勝に進出するまで1度も敗戦がなかった。同じシリア勢であるワフダとの対戦となった決勝では、第1戦は3−2で勝利したが、第2戦では0−1で敗れている。
ジャイシュのすぐれた選手としては、数々のタイトルをもたらし、昨シーズンは監督としてリーグ優勝を果たしたターリク・ジャバーンのほか、シリアサッカー史上最高の選手の一人と言われるアフマド・アッザームらがいる。
最近では、ムハンマド・ワーキドが最もすぐれた選手だとされている。昨シーズンのAFCカップ西アジア地区準決勝初戦でヨルダンのジャジーラのゴールに決めたシュートが印象的だ(*参照 https://youtu.be/_Z4_aY5aMg4)。また、昨シーズンのリーグでは29ゴールの「最多得点記録」で得点王にもなっている。
専門家の意見
シリアのジャーナリスト、マージン・ヒンディーは、同国のサッカー界の現状について次のように要約する。育成面、運営面、経済的物資での強化は、国内のタイトルを取り続けているジャイシュSCをどう支援するかということが最も重要な要素だった。それはジャイシュが国外の強豪チームに対戦するためでもあった。
ヒンディーはAFC公式サイトの取材に対し、「歴史を辿ると、国内リーグのクラブ間の競争は激しいものがありましたが、最近は、ジャブラ、シュルタ、フトゥーワ、フッリーヤ、ティシュリーンといったクラブが力をつけてきています」と述べ、こう続ける。
「カラーマとイッティハードの両クラブは長く国内のタイトルを争ってきたライバルどうしでした。また両クラブとも彼らがホームとするホムス、アレッポではそれぞれ絶大な人気を誇っていますし、シリアサッカーに多くの人材を送り込んできたクラブでもあります」
ヒンディーによると、シリアサッカーの勢力図は変動してきているといい、その要因についてこう指摘する。2011年以来、この国がさらされてきた出来事の関連でいえば、ホムスとアレッポは直接的な打撃を受けた。そしてそれに代わって、ワフダやワスバ、あるいはティシュリーンといったクラブの台頭を見たのだという。とくにティシュリーンはこの3シーズン、リーグでは優勝争いに絡んでおり、今シーズンは、現在首位で、タイトル獲得に近づいている。
一方、ジャーナリストのハーニー・スィクルは、シリアのサッカーファンについてこう見ている。自ら応援するクラブにアイデンティティを感じるサポーターたちを育てるすばらしい応援組織があることで、ファンたちは大変な情熱を持ってリーグなどの動向を注目している。もちろん、ほとんどのクラブについていうと、広範な人気を有するのは、地理的な理由からだ。
「今世紀の初めまで、リーグ戦の複数の試合を同時にテレビ中継するという発想はありませんでした。だからファンたちは試合を見るためにはスタジアムに行くしかなかったのです。多くのクラブにとって、そうすることでファンを獲得していました」とスィクルは言い、続ける。
「シリアでは、スタジアムでアウェーチームを応援するサポーターの姿を目にするのはまれなことなんです。たとえ、ホームチームが優勝の望みがなくなった状況にあったとしてもです。同じまちの住民が複数のチームのサポーターに分かれてしまえば、クラブの地理的分布が、観客動員という点で見るとサポーターの多様性創出に大きく貢献することは間違いありません(*この文章、よくわかりません。おそらく地元以外のチームを応援するサポーターが増えることは、観客動員的にはいいことだという意味か?)。
「試合のテレビ中継技術の進歩(*チャンネル数が増えたこともあり、同じ日に多くの試合を中継できるようになったこと)、そして、シリアのクラブチームが国際大会での好成績(ジャイシュとワフダの2004年AFCカップの決勝進出、カラーマのチャンピオンズリーグ準優勝、イッティハードのAFCカップ優勝など)は、地理的理由以外でクラブが人気を獲得していく大きな要因となっています」
生まれ故郷のチームを愛し応援する古い世代とは対照的に、サポーターの新世代、とくに(*地理的理由からではなく)リーグでタイトルを獲るクラブだからという理由で応援するチームを決める若者たちは、シリア国内のクラブ間の競争力を高める結果を生み出している、とスィクルは見ている。