挑戦つづけるシリアの女性コーチ

シリア内戦/社会
スプートニクアラビア語版のホームページより

シリアには男子のトップチームでコーチをつとめたことのある女性コーチがいます。マハー・ジュヌードさん。今回はそのジュヌードさんのインタビュー記事を紹介します。

ジュヌードさんについては、本ブログでもこれまで何度か紹介してきました(シリア男子チームを指導する女性コーチ | シリアサッカー事情他)。

今回紹介するインタビュー記事では、とくだん目新しいことは話していないようです。それも無理もないかもしれませんね。なにしろオジさんぞろいの世界でやっていかなくてはならないわけで、自分の理想とするところに少しでも近づくにはどうすればいいかと考えれば、言いたいことをはっきりと全部ぶちまけても、結果が得られるばかりではないでしょう。それでも、今回もまた以前同様、自分の目標はシリア男子代表チームのコーチになることだと、変わらぬ信念を語っているのは気持ちいいですね。

本文中に出てくるAFC(アジアサッカー連盟)公認のライセンスについて説明しておきます。タイでサッカーコーチをしている加藤光男さん(日本代表の元GKコーチ加藤好男さんの息子さんだそうです)のブログによると、アジアには、日本のように指導者のライセンス制度が整備されている国ばかりではないので、そういった国で指導者をめざす人は、AFCの制度で指導者ライセンスを取得することになるのだそうです(参考:アジアサッカー連盟公認AFCライセンスを受ける理由 その1 | 二世のつぶやき)。

AFCライセンスはJFA(日本サッカー協会)のライセンスと互換性があるらしく、AFCのA級はJFAのA級と同等に扱われるとのことです。

JFA C級ライセンス AFC C級ライセンス
JFA B級ライセンス AFC B級ライセンス
JFA A級ライセンス AFC A級ライセンス JFL監督に必要なライセンス
JFA S級ライセンス AFC プロライセンス Jリーグ監督に必要なライセンス

なのでAFCのA級ライセンスを取得したマハー・ジュヌードさんは、日本のJFLチームの監督をする資格を有することになります。


 

マハー・ジュヌード アラブ女性とサッカーを語る

 

掲載紙:スプートニク アラビア語版
掲載日:2021年1月6日
URLhttps://arabic.sputniknews.com/sport/202101061047722701-مها-جنود-تتحدث-لـسبوتنيك-عن-هموم-النساء-العربيات-مع-كرة-القدم/

(見出しの一部は訳者によるもの)

「女性の声の発信者」

シリア人のマハー・ジュヌードは、シリアおよびアラブにおいて、女性として初めて男子チームのコーチをつとめたことで知られ、オマーンサッカー連盟女子部門の指導を行ってきたがこのほどその任務を終えた。

アジアサッカー連盟女子委員会委員でもあるジュヌードは、シリアおよびアラブ地域の女子サッカーが抱える問題について、「スプートニク」の取材にこたえた。

その中で、「シリアを含む西アジアの国々では、女子の人材、コーチやレフェリー、そしてフィジカルトレーナーなどを問わず、大幅な人材不足に悩まされています。これは人数面での問題ですが、このことに加え、技術的な指導者を育成する戦略やプログラムも欠如しているのです」と指摘する。

シリアサッカー連盟女子サッカー開発部門の責任者をつとめてきたジュヌードは、女子サッカーにおいて、アラブ女性の前に立ちはだかる課題に関する情報を数え切れないくらい発信してきた。また、シリアの女子サッカー状況を覚醒させるプロジェクト(継続中)を手がけてきた。

現在もアジアサッカー連盟の立場から、女子サッカーの地位向上のための活動に尽力している。

サッカーは女性をエンパワメントする

ジュヌードは、サッカー選手になることを夢見る女の子たちに、怖がることなく、勇気を持ってこの世界に飛び込んでくるよううったえている。

「女の子たちはボールに接するとみんなサッカーが大好きになり夢中になります。それは彼女自身をエンパワメントすることにつながり、人生において新たな可能性を切り開くものとなるのです」

マハー・ジュヌードとサッカーとの関わりは、彼女がダマスカスのムハーファザSCの選手になることを決めたときから始まった。その後6年間、シリア女子代表として活躍した。

「実際のところ、子ども時代、わたしはサッカーに夢中でした。中学校を卒業すると、親の協力も得て、スポーツ研究所(*日本のJFAアカデミーのような養成機関か)に入所し、そこのサッカーチームのメンバーとなりました。そして、2004年にムハーファザSCに加入しました。これがわたしの夢の実現の最初の一歩になったのでした」

女性コーチ向け指導書

ジュヌードは2020年、オマーンサッカー連盟女子部門責任者の任に就き、同国女子代表チームの指導を行った。

「オマーンでの活動は、年代別女子チームの監督と、同国の女子サッカー発展のための活動を指導することでした。オマーンサッカー連盟が、大勢いる女性指導者の中からわたしを選んだのは、わたしがこれまでやってきたシリア女子代表やいくつかのクラブでの指導を評価してくれたからだと思います」

ジュヌードは、オマーンサッカー連盟の協力で「サッカーコーチの基礎と原理」を出版した。同書はおそらく、女性コーチにとってサッカーを指導するうえで原理、原則を教える手引書となると言う。

男子トップチームでの経験

2018年、マハー・ジュヌードはムハーファザSC男子トップチームのアシスタントコーチに就任した。ムハーファザはシリア1部リーグ(*日本のJ2に相当)に所属するチームだ。

「このときの経験はとても貴重なもので何ものにも変えがたいものでした。指導に男子も女子も違いはありません。フィジカルやメンタル面に違いがあるくらいです。コーチというものは、選手たちに最先端の情報を含む科学的で基本的な材料を提示するだけですから。選手たちも受け入れてくれましたし、クラブの協力もありましたので、なんの問題もありませんでしたね。…お互い受け入れ、リスペクトし合っていたと思います」

ジュヌードは指導者ライセンス取得のため、シリア国内外でいくつかの講習を受講、2008年、FIFA公認の指導者ライセンスを取得している。また、2010年にはカタールで(*アジアサッカー連盟公認)C級ライセンスを取得。さらには、アジアサッカー連盟の選りすぐりのコーチや専門家が講師をつとめる「未来のコーチ育成プロジェクト」を2012年まで受講した。同プロジェクトの講習を修了し、マレーシアで(*AFC公認)B級ライセンスを取得、その後、同A級も取得するに至っている。

挑戦はつづく

マハー・ジュヌードは、自分の目標には終わりがない、目標を持つことによって、それがその人のあるべき未来に導いてくれるからだ、と話す。

「わたしは高いレベルで指導者として今よりもっと重要な場所で任務を果たしたいと思っています」

競技を通じて、シリアの人々に喜びをもたらせるよう、ナビール・マアルール監督率いるシリア代表に貢献することを願っている。

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