今回紹介するのは、ラーイ・アル=ヤウム(エジプトのネットメディア)が2017年2月8日に掲載した、「孤児ワールドカップ」出場をめざすガザ地区の子どもたちに関する記事(أطفال غزة يشقون طريقهم نحو “مونديال الأيتام” لكرة القدم)。トルコのアナドル通信社の配信記事です。
男子フル代表のワールドカップを頂点に、各年代別のワールドカップ、女子やフットサルのワールドカップ、障害者のワールドカップ、変わったところでは、ホームレスワールドカップや、ConIFAワールドカップ(FIFAに加盟していないナショナルチームによる大会)など、「ワールドカップ」と名のつくサッカーの大会は数多くあります。
これらに加え、2年前から親をなくした子どもたちによるワールドカップも行われているんだそうです(フットサルコートで行われる大会のようです)。
大会を主催するのはカタール王女のシャイハ・アール・サーニーさんが代表とつとめるチャリティー団体。同団体のホームページにアップされている動画を見ると、彼女はまだ15歳なんだそうです。さっそうとして、とても堂々としています。アラブの王族の女性というと、ヨルダン王妃のラニア・アル=アブドゥッラーさんが美人で有名ですが、シャイハさんもなかなかのものです。
FIFA会長もこの大会の趣旨に共鳴し、将来、FIFAの公式大会として承認する可能性もあると記事には記されてあります。その可能性がどれほどのものかはわかりません。
今回の記事によると、今年(2017年)7月、モロッコで行われる第2回大会に出場するのは、25チームと書かれていますが、大会のフェイスブックを見ると現在27チームに増えているみたい。驚いたことに、シリアは第1回大会も参加しており、今回も続いて参加するようです。不幸なことでありますが、孤児の数ということで言えば、シリアではこの6年で大幅に増えているに違いありません。
記事に出てくる関係者たちは、この大会がガザの子どもたちの支えになるといった趣旨のことを話しています。でも、気になるのはこれは男の子の大会なんですね。女の子に対してもこういった種類のサポートが行われているのかいないのか。
大会ホームページ
Satucfootballcup charity founded by Sheikha Al Thani
大会フェイスブック
https://www.facebook.com/satucorganization/
元記事URL:
http://www.raialyoum.com/?p=617939
孤児ワールドカップに向かってガザの子どもたちは未来をひらく
2017年2月8日
ラーイ・アル=ヤウム(エジプト)
アラー・アター・アッラー、ムハンマド・マージド/アナドル通信社
(小見出しは訳者)
優勝カップを抱きしめる
毎晩、ハサン・アブー・タイイバくんはまどろむとき、今年7月にモロッコで行われるサッカーの孤児ワールドカップの優勝カップを抱きしめる夢以外、見ることはない。
大会に出場するパレスチナ代表候補として数百人の子どもたちとともに選抜された13歳になるアブー・タイイバくんは、毎朝早くに目をさます。彼が追い求める夢の実現のためのはじめの一歩に向かって走り出すためだ。
ことの始まりは、ガザにある親をなくした子どもたちの養護施設である希望園からだった。希望園に第2回孤児ワールドカップにパレスチナの参加を求める正式の招待状が届いたのである。この大会は、カタール王女のシャイハ・アール・サーニーさんが代表をつとめる「サートゥーク慈善」協会が組織したものだ。
希望園のグラウンドでアブー・タイイバくんは、サッカーのプロフェッショナルアカデミーのコーチたちからキックやシュートのやり方について特訓を受けている。
彼がゴールを決めると、夢が一歩近づいたことで、手を叩いて喜ぶ。そして、チームメートの大きな叫び声がその場に響いたあと、アナドル通信社の取材にこう話す。
「ぼくらは大会に参加したい。必ず優勝してみせるよ」
2014年の夏、イスラエルがガザ地区にしかけた直近の戦争で両親をなくしたこの少年は、パレスチナ代表に選ばれるため、一生懸命練習に全力をつぎ込んでいるんだ、と話す。
アブー・タイイバくんは、外国を旅し、封鎖されたガザ地区から、あるいは困難を伴う地区での生活から離れて、サッカーをしたり楽しいことをしたりして時間を過ごすことを思い描いて幸せを感じている。
将来への足がかり
今週はじめ、孤児3000人が参加してガザ地区レベルでのトレーニングキャンプが始まった。その中から大会に参加する8人を選抜することになっている。孤児ワールドカップは2015年にエジプトで始まったが、パレスチナは今回が初参加となる。
相手からボールを奪う技術的な作戦について指示を聞くためコーチの周りに集まった子どもたちの輪の近くで、アフマド・ナッジャールくん(14歳)は、将来は有名選手になりたいと夢を語る。
ナッジャールくんはアナドル通信社の取材に対し、ボールを蹴りながら、孤児の境遇や(2012年にイスラエルがしかけた戦争で)両親を失った悲しみを吐き出して、こう言う。
「大会には絶対出場したいな。外国でパレスチナの代表としてプレーして、そして優勝したいんだ」
少年は、毎日他の子どもたちと一緒に必死に練習している、と言う。そして、自分たちにとって、この孤児ワールドカップが、サッカー界において高く飛び立つきっかけとなるよう夢みている(訳注:プロの選手としての道を切り開きたいといった意味だと思う)。
パレスチナ社会問題省が発表した統計によると、ガザ地区において、イスラエルがくり返ししかける戦争行為、もしくは自然死によって生じた孤児の総数は、2万人に達している。また3度にわたる戦争による孤児数(18歳以下)は、3366人と見られ、うち2053人は、2014年の戦争で両親をなくしている。
孤児問題アピールできる「稀有な場」
孤児ワールドカップには25の代表チームが参加する予定だ。養護施設希望園運営委員長のイヤード・アル=ミスリーさんは、この大会について、パレスチナとりわけガザ地区にとって、国際的な大会においてパレスチナの孤児問題に光をあてることができる「稀有な場」だと見ている。
アル=ミスリーさんはアバドル通信社の取材にこう話す。
「われわれは11歳から15歳までの子どもたち3000人を対象に選考を行いました。われわれはガザ地区レベルの児童養護諸団体とも連絡を取り合っています。現在、大会でパレスチナ国家を代表する選手の最終選考の段階です。選手8人とコーチ3人を選出する予定です」
アル=ミスリーさんは大会ではパレスチナ代表が優勝することを願っているが、大会がガザの孤児の心の再生にとって大きな役割を果たす意義を強調している。
FIFA会長の賛同
孤児ワールドカップの発案者であるシャイハ・アール・サーニーさんは大会に関する記者会見の中で、この大会が2017年の今回、遅くとも2019年の次回において、国際サッカー連盟(FIFA)から承認されるよう期待を表明した。
アール・サーニーさんは、スポーツ活動の業績を表彰するムハンマド・ビン・ラーシド賞をアラブ団体部門で受賞した際にドバイで行われた記者会見の中で、孤児ワールドカップの運営を担う彼女のチャリティー団体が、FIFAに承認を求める正式な書簡を送付したと述べた。FIFA側はジャンニ・インファンティーノ会長が口頭で、大会のアイデアに魅了されたこととこれを支持すること、そして将来、大会を承認する可能性について表明したという。
「名誉ある勲章」
ガザ地区のプロフェッショナルアカデミー(コーチングスタッフの確保とパレスチナ代表に選出される子どもたちの選考を担当)のイヤード・サイサーリム代表によると、参加選手の選考は能力の高さにより行われることになるという。
サイサーリム代表はアナドル通信社の取材に対し、次のように話している。
「ここには子どもたちの間で激しい競争があります。トレーニングは中身の濃いものとなっています。われわれは高い技術を持つ8選手を選考することになるでしょう」
また、同代表は、大会への参加は、パレスチナの子どもたちにとって「名誉ある勲章」だと説明し、この大会が、苦しい日常生活から離れて、ガザの子どもたちにとって、安らぎの場になることを希望しているという。
ガザ地区では2008年から2014年の9年間で(訳注:2006年から2014年の間違いか)、イスラエルがしかけた戦争が3回発生している。中でも最も激しかったのが3年前に起こった直近の戦争である。パレスチナ保健省によると、この戦争でパレスチナ人2323人が犠牲となり、うち578人は子どもだった。