反体制派支配地域から国内トップリーグに参戦 シリア

シリア・クルド
http://www.sana.sy/?p=558154より

今回紹介するのは、SANA(国営シリア・アラブ通信社)が2017年5月20日に配信した、来シーズンのシリアトップリーグ昇格チーム決定に関するもの(الجهاد وحرفيو حلب يتأهلان بجدارة الى الدوري الممتاز لكرة القدم – S A N A)。

現在ヨーロッパなどでは2017/18シーズンがスタートしつつありますが、シリアではまだ、16/17シーズンが終わっていません(全30節中26節まで終了。2017年8月5日時点)。

この国で戦争が始まって6年以上にもなります。そんな中でも、サッカーの国内リーグはずっと開催されているという驚きの事実は、このブログでもなんでも紹介してきたところです。

昨シーズンまでは安全面の理由から、試合は、治安が比較的保たれているといわれる首都ダマスカスとラタキアという西部の都市でのみ開催されていましたが、今シーズンから、ホムスとハマでも行われるようになっています。昨年末激戦の末、政府軍側が奪還したアレッポでも、今年に入ってダービー戦(イッティハード対フッリーヤ戦)が開催され、大盛り上がりだったというニュースも届いています(5年ぶりのダービー…戦乱のアレッポにサッカーが戻る)。

そして、戦火の中で開催されているのは、トップリーグだけでなく、2部リーグもなんですね。2部リーグでは5月にシーズンを終了しているようで、来季の1部に昇格する2チームも決まっています。そのうちの一つが、「ジハード」というカーミシュリーというシリア北東部、イラクとトルコの国境付近の町をホームとするクルド人のチームです。

ぼくはカーミシュリーという美しい町とともに、ジハードにすごくひかれていましてね(このチームの試合は1試合も見たことないんだけど)。このブログでも過去何度か紹介したことがあります。そもそもアラビア語紙に掲載されたサッカー記事を読めるように勉強を始めたのも、このチームに関する情報を得たいという理由からでした。

シリアでは戦争前は、クルド人の民族的権利が押さえつけられていたのですが、サッカーだけは別で、ジハードには、地元だけでなく、各地のクルド人が声援を送る人気チームでした。

抑圧されている中、サッカーを通してシリア社会において民族的感情がどのように表現されているのか、取材をしてみたいと思っていたのですが、まだしばらくは果てせそうにありません。

ところで、現在カーミシュリーを含むハサカ県の大半は、西クルディスタン移行期民政局人民防衛部隊(YPG)という反シリア政府派のクルド人組織が支配しているはずなんですが、そんな町のチームもシリアサッカー連盟が管轄する国内リーグに参戦しているんですね。

シリアのクルド人組織は、イスラム国の最大拠点都市ラッカ奪還に向けて進軍するなど、シリア国内で地歩を広げています(西クルディスタン移行期民政局は反体制といっても、局面にとってはシリア政府と事実上協力関係にありますので、単純な反体制派とはいえない)。

いうなれば反体制派の支配地域を本拠とするチームが、国内のトップリーグに参戦することになるわけで、どうなっているのか、ややこしいですね。このへんの事情はよくわかりません。今後シリア情勢が変遷する中で、この小さくて人気の高いチームがどういう道を歩むのか、注視していきたいと思っています。

なお、シリア国内リーグのシステムについてはよく知らないのですが、2部リーグではまず通常のリーグ戦を行い、成績上位の6チームによる決勝ラウンドを行って、プレミア昇格チームを決定しているのだと思います。


元記事URL http://www.sana.sy/?p=558154

ジハードとアレッポ・ヒラフィオがトップリーグ昇格

掲載紙:SANA
掲載日:2017年5月20日配信

✴︎は訳注 小見出しは訳者による

http://www.sana.sy/?p=558154より

初戦敗戦から4連勝で昇格決める

【ハサカ(SANA)】ジハードが、プレミアリーグへの昇格をかけた1部リーグ(✴︎日本のJ2リーグに相当)決勝ラウンド最終戦で、アラビーに5対1で勝利し、プレミアリーグ復帰を決めた。

ジハードは、決勝ラウンドではクムハーナ、ジャルマーナ、サーヒル、アラビーに勝ち、アレッポ・ヒラフィオに敗れ、4勝1敗の成績だった。

カーミシュリー空港では、ジハードのファンたちは、ダマスカスから戻ってくるチーム一行を出迎え、その後、プレミアリーグ復帰を達成したことに喜びを表しながら一行とともにクラブ事務所まで同行した。

ジハードの経営陣の一人、バフナーン・スフーク氏は、SANA記者の取材に対し、クラブとして、カーミシュリーからの(試合会場となるダマスカスなどへの)移動や滞在などを含め、コーチングスタッフや選手たちが必要とするものの確保に最大限努力したと話し、地元あるいは避難先にいるファンたちは、チームのために物心両面での支援を寄せてくれた。また、彼らはレギュラーシーズンの試合からトレーニングまでずっとチームに同行してくれた、と続ける。

ジハードのハサン・ジャージャーン監督は、チームは初戦で負けてしまいプレッシャーを抱えることになったが、その後実力を発揮し4連勝をかざった。それは経験豊富なベテラン選手と数人の才能豊かな若い選手たちがうまく融合したことによるものだった、と語る。

スポーツ連盟ハサカ支部実行委員会のムスタファ・シャーカルディー委員長は、ジハードのプレミア復帰は、ハサカ県のスポーツ界にとって強いモチベーションになると、その意義を強調する。そして、さまざまな競技のさまざまな選手たちは、国内の大会に年代別の大会に出場し、そこですぐれた成績を上げ、ランキングをアップすることを強く望んでいる、と話している。

クラブの報道担当官アブドゥル・ジャッバール・ファルハーン氏によると、ファンたちは、ダマスカスまでやって来てくれたし、カーミシュリー内外から、チームのSNSを通じて常に熱心に応援してくれた。彼らは、チームのプレミア復帰を支え、愛情を注ぎ、喜びを表してくれた、と言う。

アッバース・アサル選手は、チームは、勝利とプレミア復帰を達成するため、選手全員が熱情と強い意思を持ち続け、決勝ラウンドの準備段階から試合までずっと一致団結していた、と話す。

また、イマード・イーサー選手は、このような結果を可能にしたのは、選手全員の団結と協力、そして勝利のためにはできることはなんでもやろうという強い思いによるものだ、と言い、さらに、レギュラーシーズン及び決勝ラウンドの練習から試合に至るまで寄せてくれたジハードのファンたちの大きな支援のおかげだ、と述べている。

アレッポスポーツ界の勝利

一方、アレッポでも、プレミアリーグ昇格の最後の切符をもぎ取り、サッカーのまちアレッポのイッティハードとフッリーヤという2大クラブとともに、強豪の仲間入りを果たしたアレッポ・フィラフィオの快挙が祝われた。

アレッポスポーツ連盟実行委員会のアフマド・マンスール委員長は、この快挙はアレッポとアレッポスポーツ界にとっての勝利であり、経営陣、選手たち、監督などチームスタッフ全員の長く、粘り強い努力に対する栄誉だ、と話す。そして、実行委員会として、プレミアリーグをたたかううえで、チームが求めるあらゆる支援を行っていくつもりだ、と強調している。

アレッポプロ選手連盟のブクール・ファルフ会長は、この快挙達成に尽力、貢献したクラブ経営陣、選手たち、チームスタッフらは、プレミアリーグでも最良の結果を得るために今後も努力を継続することの必要があるという考えを強調している。

一方、クラブのハサン・ハムダーン会長は、快挙は、困難で過酷な環境の中、シーズンを通して全員が尽力したことが実を結んだものだ、と話す。そして、プレミアリーグでもチームが安定した成績を残すためには、関係機関のさらなる支援が必要だ、と述べている。

6チームによる1部リーグ決勝ラウンドの結果、ジハードとアレッポ・ヒラフィオがプレミアリーグへの昇格を決めている。最終順位は、ジハードが勝点12で首位、続いて2位のアレッポ・ヒラフィオが同10で昇格。3位アラビー(同9)、4位サーヒル(同5)、5位ジャルマーナ(同4)、6位クフハーナ(同2)は1部リーグに留まる。

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