「オフサイド・ガールズ」2017 イラン対シリア

シリア代表
AFP ATTA KENARE مشجعة سورية خلال المباراة

イランでは女性のサッカー観戦が認められていないのは、比較的知られたことだと思います。ところが、ワールドカップアジア最終予選の最終戦、テヘランで行われたイラン対シリア戦には、イラン人女性もスタジアムに入り込んで観戦していたそうです。その方法とは? 今回紹介するのは、ロシア紙「RTアラビア語版」に2017年9月5日に掲載された、كيف دخلت السيدات الإيرانيات إلى المدرجات خلال مباراة سوريا-إيران رغم الحظر؟ – RT Arabicです。

日本がイランで試合をするときもそうですが、日本のサポーターであれば、女性でもスタジアムに入ることが許され、観戦できます。なので今回のシリア戦でも、シリア側の女性サポーターは入場を認められていました。

そこで、この国際試合ならではの措置を利用して、シリアの国旗やアサド大統領の写真を持参していれば、イラン人であっても、シリア人女性として入場が認められていたんだというのです。

さらに、この記事で興味深いのは、当局(警察)自身が、シリア国旗を持っていれば入場を認めると、観戦を希望する女性たちに告げていたというんですね。現場責任者の判断で、特例的にそう言ったのか、それとも女性のスタジアム入場禁止は、実際はかなりゆるくなっているのか。

また今回のシリア戦の前に、女性向けに観戦チケットが販売されたものの、その後「技術上のミスだった」と撤回されるという奇妙な出来事もありました(イラン、W杯予選で女性向け観戦チケット販売も取り消しに 国際ニュース:AFPBB News)。

イランでは、女性のサッカー観戦をめぐって今、保守派と改革派の激しいやり取りのさなかなのかもしれません。

なお、スタジアムでの観戦を禁じているのは、イランだけでなく、おそらくほとんどの湾岸諸国も同様だと思います。イランのことがしばしばクローズアップされるのは、それだけ国内に観戦を要求する声があるというか、女性の権利拡大を求める社会運動が存在しているからなんだと思います。あるいは、イラン女性のサッカーへの熱い情熱の証といえるかもしれません。

この問題をテーマにした「オフサイド・ガールズ」というすばらしい映画も作られています。

蛇足:記事の5枚目の写真に、レバノンのヒズボラの黄色い旗が写っています。これって、明らかに政治的表現で、FIFAのルールに違反すると思いますが、いいのか。


元記事URL https://arabic.rt.com/middle_east/897514-كيف-دخلت-السيدات-الإيرانيات-إلى-المدرجات-خلال-مباراة-سوريا-إيران-رغم-الحظر/

イラン女性はいかにして観客席に入ったか

掲載紙:RTアラビア語版
掲載日:2017年9月5日
執筆者:オマル・ハワーシュ(RT)

(*は訳注)

 

イランの女性たちは、イラン対シリア戦をスタジアムで観戦することを禁じられた。試合はテヘランで行われたが、シリア人の女性サポーターは入場を認められていたこともあり、イラン国内ではSNSなどで論争が沸き起こっている。

複数の女性活動家らは、ツイッターに、アザディー・スタジアムに入ろうと試みたことを、書き込んでいる。彼女たちの入場を禁じた警察から、観戦したければ、シリアの国旗を持ってくるよう求められた。そうすれば彼女たちをシリア人として扱い、入場を許めると言うのだった。

AFP ATTA KENARE 試合中のシリア人サポーター

この女性活動家らによると、実際のところ、何人かのイラン人の女性サポーターは、シリア国旗やバッシャール・アサド大統領の写真を持ち込みに同意することで、入場したのだという。しかし、そういった行為はイランに対する裏切りだとして、同意することを拒否した女性たちもいたとのことだ。

(https://arabic.rt.com/middle_east/897514-كيف-دخلت-السيدات-الإيرانيات-إلى-المدرجات-خلال-مباراة-سوريا-إيران-رغم-الحظر/より)

この試合の観客席には、かぶり物を身につけないシリア人の若い女性たちの姿が見られた。当局は、イラン人であろうと外国人であろうと、この国では女性に対し髪をおおうことを義務付けているはずなのだが。

(https://arabic.rt.com/middle_east/897514-كيف-دخلت-السيدات-الإيرانيات-إلى-المدرجات-خلال-مباراة-سوريا-إيران-رغم-الحظر/より)

ツイッターにこう書き込んだ人もいる。「イランでは法律で髪をおおうことが義務付けられ、女性のスタジアムへの入場が違法とされているのだ。シリア人女性の入場、しかもヒジャーブで髪をおおっていないのは、イラン人女性に対する冒とくであり、差別行為だ」

(https://arabic.rt.com/middle_east/897514-كيف-دخلت-السيدات-الإيرانيات-إلى-المدرجات-خلال-مباراة-سوريا-إيران-رغم-الحظر/より)

別の活動家(男性)は、「スタジアムの中にはシリア人女性がおり、一方で、外には、イラン人女性がいる。われわれはこの国ではお客さんなんだ(*不公平な扱いを受けているといった意味でしょう)」と話している。

(https://arabic.rt.com/middle_east/897514-كيف-دخلت-السيدات-الإيرانيات-إلى-المدرجات-خلال-مباراة-سوريا-إيران-رغم-الحظر/より)

またこれより前に、この試合の中継でコメンテーターをつとめたバイマーン・ユーセフィーは、保守強硬派が実権を握るテレビ放送を通して、イランでは女性がスタジアムで祖国の代表を応援できないのは残念なことだと発言している。「スタジアムには若いシリアの女性たちがいます。イラン女性もスタジアムで観戦できるようになればいいと思いますね」

(https://arabic.rt.com/middle_east/897514-كيف-دخلت-السيدات-الإيرانيات-إلى-المدرجات-خلال-مباراة-سوريا-إيران-رغم-الحظر/より)

イランの法律では女性のスタジアム入場を禁じている。当局は、若い男性たちの中に女性が置かれることや、応援のさなか男性たちが不道徳な言動をとる可能性があるとして、入場禁止を正当化している。だが、それでも試合があるたびに、大勢の女性たちが、男装してスタジアムに入ろうとするのである。

コメント

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