昨日(2017年9月28日)、一人のサッカー選手が刑務所から釈放されました。釈放の裏には、どうも複雑な動きがあったようです。今回紹介するのは、シリアの反政府系紙「イナブ・バラディ」が2017年9月28日付で掲載した、النظام السوري يفرج عن اللاعب محمد كنيص – عنب بلديです。
ぼくはfacebookでシリア代表のFWオマル・スーマ選手をフォローしています。昨夜寝床の中でタイムラインをチェックしていると、ある男性の写真を掲載したスーマ選手の投稿が流れてきました。見たこともない人物です。投稿には写真についての説明文はなく、「神様のおかげです」といった決まり文句が添えられているだけでした。
(https://www.facebook.com/omar.somah/posts/1512297208859458)
コメント欄にはいろんな人が書き込んでいるので、それをみればこの男性が誰で、この写真の掲載が何を意味するのかわかったんだとは思いますが、とくだん興味がわかなかったので、そのままスルーして寝ました(新聞記事などフォーマルな文章はともかく、SNSなどのくだけた文章のアラビア語を読むのは、まだ時間がかかるのです)。
ところが今朝起きてfacebookを開くと、「スーマ選手がアサド大統領に感謝」という内容の「シリアプロスポーツ」の投稿が目にとまりました。スーマ選手の古巣「フトゥーワ」というデリゾールをホームとするチーム在籍時の同僚が、数年ぶりに釈放されたというニュースです。そして、釈放を支援してくれた大統領らに、スーマ選手が感謝しているとのことでした。どうやら、昨夜スーマ選手が写真を掲載した男性は、釈放された選手だったみたいです。「シリアプロスポーツ」の記事については、当サイトのfacebookページで紹介しています。
(https://www.facebook.com/salaamfootball/posts/283818518787438)
今でこそ、シリア代表に復帰しているとはいえ、ついこの間まで、反体制派の象徴的なサッカー選手の一人と目されていたスーマ選手が、なぜわざわざ大統領に感謝の意を表明しなければならないのか。
気になって調べてみると、今回紹介する記事を見つけました。
スーマ選手の代表復帰をめぐっては、賛否両論あるようです。ぼくなんかは単純にめでたいことではないかと思っていました。
ところが、今回の記事を読むと、どうも裏ではかなり複雑な事情があるみたいです。スーマ選手は自分の身と引き換えに(批判覚悟で)、タフな駆け引きをしているようです。したがって、スーマ選手がアサド大統領に感謝したという記事を、額面通りに受け取らないほうがいいかもしれません。
元記事URL https://www.enabbaladi.net/archives/175284#
徴兵忌避選手を釈放 シリア政府
掲載紙:イナブ・バラディ
掲載日:2017年9月28日
(文中*は訳注)
シリア政府は今日(2017年9月28日木曜日)、サッカーの「シュルタ」クラブに所属するムハンマド・カニース選手を、逮捕から3年ぶりに釈放した。
シリア代表のFWで同選手のチームメートだったオマル・スーマ選手は、自身のフェイスブックに、「アッラーのおかげです」とのコメントとともに、カニース選手の何枚かの写真を掲載した。
2013年11月、カニース選手はダマスカスの治安当局の一つによって逮捕された。容疑は徴兵忌避だった。
フェイスブックの「オマル・スーマ・サポーターズ」のページによると、スーマ選手は、シリアスポーツ連盟のムワッファク・ジュムア会長とファーディ・ダッバース副会長に対し、自分がシリア代表に復帰するのと同時に、カニース選手や他の逮捕者の釈放のため働きかけるよう要請していたという。
また、先月(*2017年8月)のスーマ選手のダマスカスへの帰還は、カニース選手の釈放のためだったと言われている。ムワッファク・ジュムア会長がスーマ選手に対し、同選手釈放を含め、スーマ選手に関わるいくつかの懸案事項の解決のため、ダマスカスに帰還すよう要請していたという。
ただし、スーマ選手は、カニース選手釈放への自らの関わりについて何もコメントしていない。個人アカウントのフェイスブックページにカニース選手の写真を掲載しただけだ。
スーマ選手は、ワールドカップ・アジアプレーオフへの出場権を獲得した後、シリア代表とともに帰国した。その際シリアのテレビ局の取材を受け、バッシャール・アサド大統領のスポーツへの支援に感謝の意を表明している。このことは、シリア革命を支持する人びとの怒りを買った。彼らはスーマ選手を、裏切りだ、体制側の刑務所にチームメートのムハンマド・カニース選手がいること忘れてしまったのかと、批判していた。
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