前回紹介した記事では、最近のシリア代表の好成績の背景にはシリアサッカー連盟のバックアップがあるといった部分がありました。ところが今回の記事は、それとは逆に連盟がいかに代表チームの足を引っ張っているかという内容です。
日本の劇的な優勝で幕を閉じた、今年1月カタールで行われた23歳以下のアジア選手権(兼リオ・オリンピック予選)。シリアは1勝2敗で1次リーグであえなく敗退しました。近年、シリアのオリンピック代表はけっこういい結果を残しており、もっとやるのかと思っていましたので、意外な結果でした。
記事によると、この敗退は連盟内部の内紛が原因だというのです。
ただし今回の記事、連盟の内部抗争について言及しているのですが、具体的な事実は何も示しておらず、隔靴掻痒といったところです(余談ですが、「隔靴掻痒」を「かっかそうよう」と読むことを、恥ずかしながら初めて知りました)。
実際のところ、連盟は機能しているのかいないのか。どちらが真実かというものでもなく、おそらくどちらもそういった面があるということなんだと思います。
今回の記事もぼくにとってはちょっと難しめの記事でした。
元記事URL:
syrian soccer.com
2016年2月2日
文 ナースィル・ナッジャール(アルワタン紙)
シリアサッカー連盟の次なる危機
派閥抗争 代表チームに高いツケ
サッカー連盟から聞こえてくるニュースには喜ばしいものがまったくない。だが、この狭く閉じた組織の内情をよく知る人たちは、現在の事態は吉報をもたらすものではないし、この状態が続けば、今後もそういったことはないだろうということをよく認識している。
もとより、23歳以下のアジア選手権に随行するため連盟会長がカタールに出張し、そのまま滞在を続けてしまっていることで、連盟の活動が滞っていることは、周知のことだ。このことは二つの重要な問題に関する疑問符を浮かび上がらせている。
ひとつは、大会においてシリアが1次リーグで敗退した後も、会長がカタールにとどまらなければならない理由を、誰も見出せないでいることだ。とくに国際サッカー連盟(FIFA)の会長選挙期間中においてなのでなおさらのことだ。不在により、会長の同意や決裁を必要とする問題に関わる問題が生じている。その中には連盟の最高委員会設置に関する事項も含まれている。
もうひとつは、ある人たちは会長のカタール滞在を近く開催されるFIFAの会長選挙と結びつけていることだ。この件に関して、われわれは憶測やコメントをして立ち入るつもりはないが、われわれはこの重大な事態(訳注=会長の不自然なカタール滞在)に関して、連盟からの説明と公式の声明を待っている。もし、サッカー連盟で起こっている事態が前述したようなこと(訳注=会長は単に大会に随行しているにすぎないということ)なら、それは取るに足らない問題ということになる。だが、もしそれが単なる出張や観光以上の意味を持つものなら、いかなる理由によるものなのか。
柘榴(ざくろ)
(訳注=この小見出しに続いて、柘榴に関することわざを引いて以下のことを例える一文があるのですが、意味がよくわかりませんでした)
新たにスタートしたシリアサッカー連盟は、選挙で解決し、決着がついたとわれわれが思っていた過去議論されてきた諸問題すべてを今も引きずっているようだ。選挙期間中は、ポストや取り分の分配に関する議論は、休戦状態となっていたようだった。そして会長派と副会長派との内紛はそのまま残ってしまった。これは、関係者や周辺にいるものたちが感じていることである。このことの影響はカタールでたたかっていた代表に明瞭、如実に表れていた。つまり冷戦(訳注=内部抗争)は終わっていなかったのである。結果として、チームは1次リーグで敗退してしまった。この内紛がアジア選手権での代表敗退の理由だと強調するのは、決して大げさなことでも言い過ぎということでもない。そして内部抗争は、カタールに選手を送り出す準備や口にするのもはばかられる事柄、あるいはフォーメーションやマスコミ声明にまで、すべてのことに及んでいたのだ。それはメディを巻き込んだ戦争であり、ある人たちは、代表の欠点や不道徳な混乱の薄汚いネタにするため、カタール戦でのPKすら利用した。しかし、それは真実ではない。われわれは内紛の当事者たちのいかなる見解にもくみするつもりはないが、われわれが信じるひとつの真実は、代表チームは一つの方法、あるいはそれ以上の方法で、この内紛の高いツケを支払わされたということである。
二つの派閥
シリアサッカー連盟にについて関心を持つ人たちは、これまでの内紛と一部の人たちが出したマスコミ声明によって、連盟は二つの派閥に分裂している、もしくは将来公式に分裂するであろうと考え始めている。
新たに連盟のメンバーになった人たちによるグループがある。彼らはこの戦場に参入してきた。彼らの目的は、連盟の改革であり、連盟が透明性、信頼、忠誠心のある活動をするよう押し上げることにある。改革グループは、連盟の一部の弛緩した連中と今後衝突することになるだろう。連盟の中で働こうとしない連中である。というのも彼らは、忌々しい日常業務やその場しのぎの活動スタイルに慣れきってしまっているからだ。
英知は、連盟の活動の利益とシリアサッカー界の利益とを満たす結束を求めている。
次なる危機
今シーズンのサッカー連盟の活動における最も重要なポイントは、代表チームである。連盟はサポートのため、結束してそして愛情を持って代表チームに関する会合を持つべきである。過去のすべての代表チームは試合に負けると、チームは対立と内紛の犠牲となってしまったが、われわれの活動は代表への集中的なサポートを優先させるもでなければならない。とくに、いまもなお、国外での選手のプレー環境はチームに影響をもたらす。チームが可能な限り能力を発揮できるよう、われわれは信頼し、また忠実にチームに奉仕しなければならない。
実際のところいまなお、われわれの代表チームは、世界において2番手の地位から強豪チームになることができる可能性を示している。なので、この支え合う環境が最後まで続くことを願っている。
あらゆる状況から見て、ユーモアや冗談ではなく、われわれには二つの道が存在している(訳注=ロシア・ワールドカップに出場できるかどうか岐路にあるという意味か)。われわれがたたかうアジアの様々な大会には、簡単なものはない。23歳以下のアジア選手権で代表が1次リーグを突破することに失敗し、またその他の様々な大会でも大半が最終ラウンドで敗退してしまっている状況を前にして、われわれはわれわれのサッカーのあり方を再検討すべきである。もしシリア代表が強豪になる可能性を有しているのだとしたら、個々の試合においてそれにふさわしい能力を発揮するだろう。アジア大陸においてそれにふさわしいチームは、歴史があり、技術面において、またバックアップ態勢や資金面においても巨大な能力を有している。われわれはいまワールドカップ予選をたたかっている。すでに1次予選を突破することに成功したが、「ロシアのピッチにシリア代表が立つ」という夢の実現に向かって、さらに労力を振りしぼらなければならない。
いま、ロシアへの道ははっきりしたものになっているが、ライバルたちは分厚い壁である。韓国、北朝鮮、日本、UAE、カタールは順当に勝ち進んでいる。われわれは、夢を実現するために全力を尽くし、これら強豪チームと同じように十分準備をしなければならない。
われわれは代表チームへのサポートを完璧に行わなければならない。それは単にスポーツ界にとどまらず、各界のサポート態勢も必要としている。なぜならシリア代表は、単なる「スポーツ大使」では決してなく、シリアすべての「大使」なのだから。
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