復興への歩み始まったシリアスポーツ界

今回紹介するのは、サッカーをはじめとする最近のシリアスポーツ界の明るい話題についての記事です。

記事は全体を通して、現状に関してプラス面ばかり紹介しています。記事掲載媒体が、「マヤーディーン」という親シリア政府系といわれるレバノンのテレビ局のウェブサイトであることに留意する必要があると思います。

シリアに関する日本の報道は、2011年の紛争勃発当初から、反アサド政権の立場に立っていることと関係しているのだと思いますが、国内(政権支配地域)の明るい話題が報じられることはめったにありません。

しかし、事実として、シリアではスポーツを含め各分野で復興が、少しずつでも進みつつあるのは確かだと思います。

ぼくが日常的にフォローしているシリア国内からSNSなどで発信されているサッカー関連の情報を見ても、少なくとも国内リーグに関する限り、施設面でも、組織面でも、そして人気の面でも、活況を取り戻しつつあることは間違いないと感じでいます。つい最近までは、ダマスカスとラタキアだけで、しかも観客のいない会場で細々とリーグ戦を継続していたことを思えば、信じられないような復活です。政権支持・不支持にかかわらず、このこと自体、歓迎すべきことでしょう。

なお、本文中、シリアで唯一、水泳女子でオリンピックに出場した経歴を持つバヤーン・ジュムア選手の名前が出てきます。彼女が現在も困難な中、トレーニングを続け、競技にのぞむ動画がありますので、あわせて紹介しておきます。
https://www.facebook.com/SyrianaAnalysis/videos/271424780385783/


スポーツ界も立ち直り始めたシリア

掲載紙:マヤーディーン
掲載日:2018年11月7日
URLhttp://www.almayadeen.net/news/sports/914306/سوريا-عادت—-ورياضتها-تتعافى

(小見出しは訳者によるもの)

今日のシリアのスポーツシーンは、過去数年とは異なった様相を呈している。同国のスポーツ界は、国際舞台で好成績を収めるなど活況と生命力を取り戻し、破壊されたスタジアムなどの施設の多くも、修復されつつある。スポーツ界に笑顔が戻ってきているのだ。

サッカー代表チームの躍進が後押し

シリアのスポーツ界もこの国で起こっている戦争と無縁ではいられなかった。スポーツもとてつもない代償を支払うこととなった。選手たちは命を落とし、あるいは負傷した。スポーツ施設もテロリスト集団の攻撃で破壊された。シリアもそしてスポーツ界も血を流すこととなったのだ。

現在、スポーツシーンは異なった様相を呈している。すなわち、首都ダマスカスだけでなはく、シリアは徐々に活力を取り戻してきており、国内のスポーツも、息を吹き返し始めている。スポーツ施設は戦塵をぬぐい去り、歓喜が観客席に戻ってきている。様々な競技の試合会場は活気があふれている。

サッカーのシリア代表チームが、ロシア・ワールドカップ予選でめざましい結果を残したことはよく知られている。チームは、予選の全試合をシリア国外で行うなど数々の困難に見舞われていたにもかかわらず、オーストラリアとのアジア・プレーオフまで進出した。オマル・スーマのシュートがポストを叩いていなければ、大陸間プレーオフに進んでいたかもしれなかった。代表チームのこの躍進は、シリアスポーツ界の活動再開に向けてのとてもつもない後押しとなった。

国際大会で健闘つづく

数日前のニュースだが、SANA(国営シリア・アラブ通信社)によると、シリアの育成年代の女子バスケット代表チームが、インドのバンガロールで開催されていた18歳以下のアジア選手権で、グループリーグを全勝で突破し、(*カザフスタンとの準決勝で敗れたものの)香港との3位決定戦を制し3位に入った(*この大会はあらかじめ実力に基づき2グループに分かれて開催されている。シリアの3位入賞は実力下位のディビションBでのもの。優勝はインド。ちなみに実力上位のディビジョンAの優勝は中国、準優勝は日本)。

それより前、アルジェリアで開催されたキックボクシングのアラブ選手権では、シリア代表は2つの金メダルを獲得している。また、水泳シリア女子代表で国際的にも知られるバヤーン・ジュムアは、フランスクラブ選手権の50メートルで金メダル、100メートルで銅メダルを獲得している。なお、同選手は、金メダリスト(*陸上の七種競技)のガーダ・シュアーウに次いでオリピックに出場した2人目のシリア女子選手である。

最近のこれらのシリア人選手の活躍は、この国のスポーツが、アラブ、アジア、そして世界でのたたかいに復帰し、復活しつつあることをはっきりと示す兆候である。実際のところ、シリア代表チームや選手たちが獲得した勝利やメダルの一つひとつは、この7年間シリアのスポーツ界が陥っている苦境を思えば、メダル10個分に匹敵するものだ。すべてのメダルはシリアにとっては黄金に輝くものなのである。

政府の復興事業はじまる

復興がシリアスポーツ界にもたらしている別の側面を、首位争いで盛り上がっているサッカーの国内リーグの試合会場に見ることができる。現在、ティシュリーン(*本拠ラタキア)が首位で、勝点差1でワフダ(*ダマスカス)、同2でジャイシュ(*ダマスカス)、同3でカラーマ(*ホムス)、シュルタ(*ダマスカス)、同4でサーヘル(*タルトゥース)が追っている。

スタジアムには観客席を埋め尽くすファンたちの歓声が響き、空席だらけだったかつての暗い印象は消え去っている。

ファンが戻ってきているサッカーの国内リーグの観客席 http://www.almayadeen.net/news/sports/914306/سوريا-عادت—-ورياضتها-تتعافى

これらは、スタジアムなどのスポーツ施設の修復にシリア政府が乗り出した結果だ。たとえば、スポーツ施設を含め壊滅的な破壊にさらされたアレッポでは、施設の50%で修復が始まっている。アレッポの名門クラブ、ジャラーウSCの施設は輝きを取り戻し、最近400人ものスポーツ少年を対象とした取り組みが行われた。彼らのような戦時下で育った若者たちは、シリアスポーツ界の輝かしい未来の担い手なのである。

このように、シリアのスポーツ界に笑顔が戻ってきている。シリアにとっての次の重要な大会は、「カシオンの鷹」(*サッカーシリア代表の愛称)が出場するアジアカップだ。シリア人は、ロシア・ワールドカップ予選のときのような新たな躍進を期待している。代表が、悲しみの数年間を経て、新たな歓喜をもたらしてくれることを待ち望んでいるのだ。

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