経済危機でも活発な移籍市場

シリア国内リーグ

シリア・プレミアリーグの2020/21シーズンは10月21日に開幕します。10年近く続く戦争に加え、国際社会の経済制裁により、シリアの復興は進んでいませんし、経済はずっと混迷しているはずなんですが、一部の国内クラブはこのシーズンオフ、シリアにしては高額な投資で、活発な戦力補強を行ったようです。

この記事で、選手の平均報酬額が紹介されています。「選手の平均月収は、約150万シリアポンド(約750ドル)に達し、何人かは400万シリアポンド(約2000ドル)である」とのことです。

意外と高額なので驚かされました。というのも、以前本サイトでも紹介したBBCの長編ルポによると、シリア国内の優秀の選手でさえ、報酬は月額200ドル程度だと言われていたからです(シリアサッカー最前線(1) 健闘する代表チームの陰で – シリアサッカー事情)。このルポの取材は2017年に行われていると思われますので、たった3年間で何倍にも高騰していることになります。

どちらかのデータが間違っているような気がしますが、どうでしょうか。2017年当時と比べ、シリアは治安面では安定してきていると思いますが、その間、経済状況には好材料がまったくありません。ひとりサッカー選手の報酬だけが高騰するのは難しいのではないでしょうか。とくに昨シーズンは新型コロナウイルス対策でリーグ戦は無観客、あるいは観客の人数を制限して行われていたのでなおさらです。

しかし、湾岸諸国のクラブから代表の主力クラスの選手が復帰したり、国内の若手有望選手がそろって国内にとどまったことを見ると、経済危機にもかかわらず移籍市場は活発だったことは確かなようです。

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シリアポンド下落なのに活発な移籍市場

掲載紙:RT(旧称ロシア・トゥデイ)アラビア語版(AFP配信)
掲載日:2020年9月23日
URLhttps://arabic.rt.com/sport/1156636-انتقالات-كرة-القدم-في-سوريا-تحلق-على-وقع-هبوط-الليرة/

(小見出しは訳者によるもの *は訳注)

シリアにおいて選手の移籍金が高騰している。シリア通貨(*シリアポンド)の為替レートの下落が原因だが、国内クラブは経済危機に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、財政窮乏状態にある。

平均収入は10年前の24分の1

新しいシーズンは来月21日(*2020年10月21日)に開幕するが、選手の移籍期間が始まった途端、官制のいくつかのクラブは、選手たちが要求してくる(*来シーズンの)報酬や、移籍を持ちかける他のクラブが自チームの選手たちに提示する金額の高さに驚かされている。

経済危機とシリアポンドの下落とともに、コロナウイルスの流行が重なっている。各クラブは、(*感染対策のため)リーグ戦やカップ戦の試合を無観客で開催した結果、(*従来から陥っていた)経済危機とともにコロナのダブルパンチに見舞われている。

非公式の統計だが、約10年前まで国民一人当たりの平均月収は、3万シリアポンド(約600ドル)だった。それが現在は、5万シリアポンド(約25ドル)だ。

潤沢な資金を保有するクラブ

このような経済状況にもかかわらず、リーグチャンピオン、ティシュリーン(*本拠ラタキア)は、ジャイシュ(*ダマスカス)からワルド・サラーマ、シュルタ(*ダマスカス)からカーミル・カウワーヤといった国際的な2選手をそれぞれ国内では相当高額となる年俸5000万シリアポンドで獲得し、周囲を驚かせた。ティシュリーンのこの投資は、選手との契約にとどまらず、クラブの予算規模がそれだけ拡大していることを意味する。

一方、同じラタキアのクラブで、昨シーズン3位だったフッティーンは、来シーズン、財政難による予算規模縮小に頭を抱えている。

首都のチームでは、大きな人気を集め、昨シーズンのカップ戦に優勝しでリーグ戦では5位だったワフダは、クラブ財政における負債比率が高まっているにもかかわらず、選手全員との契約を更新した。また、ウサーマ・オマリー(*カタールのカタールSC)、ハミード・ミド(*同シャマールSC)、ムハンマド・ズィーノ(*シリアのタリーヤSC)といった国際的なプレーヤー3選手を獲得した。

広がるクラブ間格差

非公式のデータによると、シリア・プレミアリーグの選手の平均月収は、約150万シリアポンド(約750ドル)に達し、何人かは400万シリアポンド(約2000ドル)である。

アレッポを本拠とし、過去いくつものビッグタイトルを獲得してきたイッティハードのバーシル・ハムウィー会長によると、「来シーズンのクラブの予算規模は4億〜5億シリアポンドで、このうちクラブとして投資額は年間2億シリアポンド程度です」と言い、その他はサポーターと国外居住者からの寄付によって支えられていると話す。

例外は、ジャイシュとシュルタというダマスカスの2クラブだ。この2クラブは、それぞれ国防省、内務省の付属チームであり、安定的な収入を享受している(*「ジャイシュ」はアラビア語で「軍」、「シュルタ」は「警察」という意味)。一方、シリアの他のクラブは、プロ組織として基本的要素である収益が欠乏しており、財政的基盤の弱さに苦慮している。プロチームとしての収益を上げることは、約20年前にシリアで現行のシステムのもとリーグの運営が始まって以来、求められるレベルで達成されたことがないのだ。

(*戦争勃発後)アレッポ、デリゾール、ハサカ、カーミシュリーといった諸都市は、様々な出来事を理由に、安全でないとされ、サッカー連盟は2011/2012年シーズンのリーグ戦を2グループ制、すなわちラタキアでリーグ戦を行う北部グループと、ダマスカスで行う南部グループに分割して実施することを決めた。また、外国籍の選手の登録を停止する措置もとった(*2016/17シーズンから1リーグ制は復活している)。

シリア代表はいまだW杯に出場したことがなく、クラブチームは、AFCの基準を満たしていないとしてAFCチャンピオンズリーグに出場することができず、AFCカップにしか出場することができない。

コメント

  1. […] ことになります。シリアの経済状況を考えると、そんなにも好転するとは思えないのですが、確かなことはわかりません。(参照 経済危機でも活発な移籍市場 – シリアサッカー事情) […]

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