もう一つの「シリアカップ」終わる

シリア内戦/社会
「イナブ・バラディ」ホームページより

シリア国内の2大タイトルの一つ、シリアカップ(共和国杯)はベスト4が出そろい、今月19日、準決勝が行われる予定です。

ところで、シリアにはもう一つ「シリアカップ」という同じ名前のサッカーのトーナメントがあります。今年3月から4月にかけて、シリア北部の都市イドリブで開催されました。

決勝戦は4月12日すでに行われており、アリーハがカラーマをPK戦の末くだし、優勝を決めています。

新たな才能の発掘?

大会を主催したのはイドリブのシリアサッカー連盟。ご存じの通り、イドリブ地方はシリアにおける反体制武装勢力国内最後の拠点ですので、同地のサッカー連盟もこの「シリアカップ」も、体制側の組織、大会とは無関係です。つまり、反体制派が独自に催した大会なのです。

決勝戦をたたかったカラーマというチームも、ホムス(シリア中部の都市)をホームとする名門チームと同一の名前ですが、これもホムスのカラーマとは無関係でしょう。おそらく、戦争によりイドリブ地方に避難したホムス出身者か、あるいはカラーマSCの関係者が関わっているんじゃないかと思います。

イドリブでの「シリアカップ」は、最近数年間、戦争のためスポーツ大会を開催することができなかった同地での久しぶりのスポーツイベントして、事前に報じられていました(参考:やまぬ情熱 反体制派最後の拠点イドリブでサッカー大会復活)。

大会が閉幕したことを告げるネットメディア「イナブ・バラディ」は、シリアサッカー連盟(イドリブ)のナーディル・アトラシュ会長の話として、住民の避難や政権軍によるスポーツ施設への爆撃などで、ずっとサッカー大会は開催できないでいたが、およそひと月にわたって大会を開催できた。大会には、サッカー連盟(イドリブ)に加盟する40チームが参加したことなどを伝えています(إدلب.. انتهاء أول بطولة كروية بعد انقطاع سنتين | عنب بلدي)。

決勝戦については、ピッチの選手たちと観客によって生み出された雰囲気は最高だったと、両選手の言葉を報じています。

また、レフェリーをつとめたムハンマド・ハミースは、今大会の収穫として、若年層の選手を含め、新たな才能豊かな選手が発掘できたことをあげています。同レフェリーによると、これまで各クラブは平均年齢27歳の選手で構成されていたのが、今回はクラブによっては16〜18歳の選手もプレーしていた。また、これまでの大会には参加していないレフェリーも複数新たに加わったとのことです。

つまり、大会はまずまず成功したと評価されているようです。ただし、前回「シリアカップ」を紹介した記事では、優勝チームには賞金を出すことも検討しているとのことでしたが、今回の「イナブ・バラディ」の記事にはそのことへの言及はありません。

(下の写真:2021年1月、イドリブのアブーフィーダ難民キャンプで雨の中開催された子どもサッカー大会の様子。本文とは関係ありません)Embed from Getty Images

壊滅状態のスポーツ組織

イドリブ地方では、ロシア、イランの支援を受けた政権軍による攻撃が2019年2月から始まり、同年4月には軍事行動はエスカレート。政権軍は、アレッポ、イドリブ、ハマ各県の郊外の町や村を支配下に収めていきました。

これに対し、2020年3月、政権軍、反体制派武装勢力双方の後ろ盾となっているロシアとトルコとが停戦に合意し、現在に至っています。

「イナブ・バラディ」によると、イドリブでは政権軍の攻撃が始まった2019年2月以来、ほとんどのスポーツ活動が停止状態にあります。施設が破壊されたことに加え、2011年以来反体制は支配地域で新たに設立された10を超えるスポーツを管轄する団体(たとえば、スポーツ総連合、オリンピック委員会など)の大半が活動を停止している状態で、各競技とも大会を開催したり、日常的にクラブや選手たちをサポートする組織が存在しないと言います。

サッカー連盟(イドリブ)も現在、傘下のクラブを一定の質を有するクラブとなるよう再編成しようとしているとのことですが、今のところ、試合に使える会場は1施設しかないそうです。

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