2021シリアカップこぼれ話

シリア国内リーグ
「Syrian Premier League」facebookページより

昨日と今日、facebookにシリアカップ(イドリブで反体制派が開催した大会ではなく、「本家」の大会)に関して連続して投稿しました。

せっかくなので、一連の投稿をまとめてこのブログにも掲載しておきます。おもな情報源は「Syrian Premier League」のfacebookページです。

決勝の対戦カード

シリア国内の2大タイトルといえば多くの国と同様、リーグ戦とカップ戦です。

今シーズンのカップ戦(シリアカップとか共和国杯などと呼ばれる)の準決勝が4月19日に行われ、ジャブラ(ラタキア県)とフッティーン(ラタキア)が決勝進出を決めました。

現在リーグ戦(第23節終了時)7位のジャブラは、今シーズン復活を遂げリーグ戦3位につけているカラーマ(ホムス)と対戦。早い時間帯にカラーマに先制を許したものの、リーグ戦で得点王レースのトップに立つマフムード・バフルのアクロバティックな逆転ゴールなどで2−1の勝利を収めました。

ジャブラ対カラーマのゴールシーン動画

一方、リーグ戦順位4位のフッティーンは同9位のイッティハード(アレッポ)と対戦し、90分を終え0−0で決着がつかず、PK戦に突入し3−2でイッティハードを退けました。

フッティーン対イッティハードのPK戦動画

下のfacebookの写真は、カラーマに2ー1で逆転勝ちし、ジャブラに帰ってきた選手が乗ったバスを迎えるジャブラSCのファンです。すごい熱狂ぶりですね。ジャブラがカップ戦で決勝まで進むのは、2002年以来だそうです。

国内タイトルはラタキア勢が独占か

というわけで、決勝はラタキア勢どうしの対戦となりました。

リーグ戦でも現在、ラタキアに本拠を置くティシュリーンが連覇に向かって快進撃を続けているので、2020/2021シーズンの国内タイトルは、ラタキア県(あるいは市)のクラブが独占する可能性が大です。これは史上初のことだそうです。

また、そうなると必然的に来シーズンのAFCカップにもラタキアの2チームが出場することになります。同一県(あるいは市)のクラブが同時に出場するのは、ダマスカス(ジャイシュ、ワフダ)につぎ、2例目となるそうです。

カラーマ 1試合2失点は今季初

準決勝と敗れたカラーマとイッティハード。ともに国内随一の名門で圧倒的人気を誇り、そして、10年に及ぶ戦争でともに大きく破壊されたホムスとアレッポのチームが決勝に進んだら、盛り上がるだろうなあと期待していましたが、かないませんでしたね。

ところで、1−2の逆転負けを喫したカラーマ。なんと今シーズンの公式戦で2失点したのはこの試合が初めてでした。

2失点以上したのは、昨シーズンのリーグ第16節ワスバとのホムスダービーで、1−3で負けて以来のこと。

以降、カラーマは公式戦37試合をたたかっていますが、うち18試合がクリーンシート(完封)、残り19試合で失点をしていますが、いずれも1点だけでした。つまり1点さえ決めれば、チームは負けることはないわけです。

準決勝ジャブラ戦の前半16分、カラーマのアムロ・ジュニヤートが先制ゴールを挙げたとき、見ていた人の多くは、ああ、これでこの試合はカラーマが勝ったなと思ったんじゃないでしょうか。

イッティハード 無失点なのに敗退

めずらしい記録という点では、フッティーンにPK戦で敗れたイッティハードも同様です。

1回戦から準決勝までの4試合すべてフル出場したイッティハードのGKハーリド・ハーッジ・ウスマーン(ハジー)は、結局相手に1ゴールも許さないまま、大会を終えることになりました。

1回戦 対アフリーン(アレッポ県)2−0
2回戦 対タリーア(ハマ)0−0(PK戦で勝利)
3回戦 対ワフダ(ダマスカス)0−0(PK戦で勝利)
準決勝 対フッティーン(ラタキア)0−0(PK戦で敗退)

これだけにとどまりません。GKハジーはシリアカップでの無失点記録を、2017/2018シーズンから続けているのです。

同シーズンのシリアカップで、ハジーは準々決勝のジャイシュ戦2試合に出場しておりともにスコアレスドロー(チームはPK戦で敗退)。

翌シーズンはサウジアラビアのダマクに移籍しましたので出場はありませんが、2019/2020シーズンはシリアに復帰(ハマをホームとするタリーアに移籍)、カップ戦1回戦古巣イッティハード戦1試合に出場し、スコアレスドローで終えています(チームは2試合合計成績で敗退)。

そして、2020/2021シーズンは前述の通り、4試合無失点。通算7試合無失点を続けていることになります。

ハジーのシリアカップでの失点は、2016/2017シーズンの準決勝ワフダ戦(1−3で敗退)で、後半19分にワフダのアニス・ブータにシュートを決められたのが最後です。

つまり、合計656時間にわたって無失点を続けていることになります。2000年以前の記録ははっきりしていないらしいのですが、少なくともこの20年間において、シリアカップの最長無失点記録となるそうです。

ただし、これだけ無失点を続けていても、彼自身一度も優勝カップだけでなく、ファイナルの舞台にも立てていません。


ハーリド・ハーッジ・ウスマーンは1987年5月、アレッポ生まれ。現在33歳。キャリアの大半を地元の名門イッティハードで過ごす。シリア代表として3試合出場しています。

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