「まる1年もの間、無報酬でも我慢し続ける監督がいると思っているのか」
「スカイニュース」アラビア語版(2021年6月17日付)によると、W杯アジア2次予選までシリア代表を率いていたチュニジア人監督ナビール・マアルールはこんな文書をシリアサッカー連盟宛に送っていたようです(لـ”أسباب مادية”.. نبيل معلول يغادر المنتخب السوري | أخبار سكاي نيوز عربية)。
前回の投稿で、シリア代表はW杯アジア2次予選をグループ首位で通過したにもかかわらず、予選終了直後から、シリアズポーツ総連盟会長がマアルール監督批判を開始し、監督自身も総連盟に対して反駁するとともに、辞任を表明したことをお伝えしました(シリア代表監督の辞任 首位で2次予選突破したが報酬不払い | シリアサッカー事情)。
シリアスポーツ総連盟というのは、サッカー連盟を含めシリア国内の競技組織を統括する上部機関です。日本でいうと、日本スポーツ協会(旧日本体育協会)あるいは日本オリンピック委員会に相当する機関になると思いますが、シリアの場合、その権限ははるかに強大なようです。
その後、マアルールの辞任は承認され、新監督にシリア人の二ザール・マフルース氏が就くこともすでに、発表されています。
ぼく自身、具体的にはその内情についてはよく把握していないのですが、シリアサッカー界は常に内紛の火種を抱えているようなのです。代表チームの成績が振るわないと、そのことを理由に、反対派が執行部を揺さぶるといったことがしばしば行われてきました。現在のスポーツ総連盟とサッカー連盟の実権は、2019年にUAEで開催されたアジアカップ(優勝カタール)でのシリア代表の惨敗の責任を問われ執行部が総退陣した後に登場した勢力が握っています。
ただし、ことは単純ではなく、現在のスポーツ総連盟とサッカー連盟の間にも何らかの対立があるようです。後述の通り、今回の辞任も両団体の抗争によって引き起こされたものだと、マアルール自身が述べています。
スポーツ総連盟とサッカー連盟の対立?
さて、「スカイニュース」によると、マアルールは、エジプトのテレビ局のインタビューにこたえ、今回の辞任は、突発的に決めたものではない。というのも去年の4月からすでにわたしとサッカー連盟との関係は切れていたのだから。彼らはずっと契約で定められたわたしに対する報酬の支払いを行っていないのだ、と述べています。
マアルールは、「今年3月に、サッカー連盟には、この1年間というもの、わたしはいかなる報酬も受け取っていないことを挙げ、まる1年もの間、無報酬でも我慢し続ける監督がいると思っているのか」と抗議する文書を送っています。
その一方、「(報酬不払いは)サッカー連盟に問題があるとは思っていない。シリアに対する国際的な経済制裁が原因だということは理解している」とも述べています。
マアルールがサッカー連盟に文書を送付したのは4月4日で、もし15日以内に事態が改善しないのなら自分は即時監督を辞任すると通告していたようで、したがって、今年6月のアジア2次予選時にはすでに、サッカー連盟との関係は切れていた。それでも2次予選は選手やサッカー連盟スタッフたちとたたかい、7勝1敗の成績で最終予選進出を決めた。最終戦となった中国戦で負けた後、正式に辞表を提出したと言っています。
スポーツ総連盟のマアラー会長からの辞任要求については、
「わたしは収入を得ていませんからね……サッカー連盟とスポーツ総連盟との間には内部抗争があり、それで彼は、わたしのことを追い出したいみたいですね」と話しています。
辞任後、未払いだった報酬問題がどのような決着を見たのかについては明らかになっていません。
コメント