セルティック・サポーターが明るみにしたこと

セルティックといえば、スコットランド・プレミアリーグの強豪です。日本では、かつて中村俊輔選手が所属し大活躍したチームとして知られていると思います。

あるいは映画好きの人には、ケン・ローチ、アッバス・キアロスタミ、エルマンノ・オルミという著名な監督3人の共作「明日へのチケット」(2006年)の中で重要な役割をになって登場する、サッカー少年3人組のことを思い出すかもしれません。ちょっとぼんやりしているけれども気のいい彼らが応援していたチームが、セルティックでした。

俊輔選手の在籍当時、日本でこのチームについてどういった紹介がされていたか記憶にないのですが、世界的に見ても人気チームの一つなんですね。かつ、サポーターたちは、IRA(アイルランド共和軍)への支持を何度も表明するなど、政治問題にも度々関与することがあるようです。

今年8月、セルティックのサポーターがイスラエルのチームとの試合で、パレスチナの国旗を大量に掲げた出来事は日本でも報道されました。

サポーターたちの行動を報じる記事を読んだとき、ぼくの抱いた第一の感想は、えらい政治的な行動をするんだなというものでした。この行為を問題視したUEFAがクラブに制裁を課すとの続報が出たときも、まあそれも仕方がないだろうと受け止めました。

しかし、今回紹介する記事を読むと、この制裁は偏った点があることがわかります。ぼくは自分ではけっこう中東情勢には関心がある方だと思っていましたが、それでも知らず知らずに、大手メディアの宣伝に囚われていたことがわかります。

なお、セルティックはイスラエルのハポエル・ビアシェバとのプレイオフを制し、チャンピオンズリーグ本大会の出場を決めています。


元記事URL:

معاقبة سيلتك... بين «الموت لاسرائيل» و«الحرية لفلسطين»!
عندما قرر الاتحاد الاوروبي لكرة القدم (يويفا) معاقبة نادي سيلتك الاسكتلندي بتغريمه ماديا بسبب رفع جماهيره أعلاما فلسطينية خلال مباراته في الدوري التمهيدي لدوري ...

セルティックへの制裁…
「イスラエルに死を」と「パレスチナに自由を」のはざま

アルクドゥス・ワルアラビー紙
2016年10月1日
ハルドゥーン・アッシャイフ

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(写真= スタンドでパレスチナ旗を掲げるセルティックのサポーター )

ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)はスコットランドのセルティックFCに対し、罰金による制裁を課すことを決定した。ヨーロッパ・チャンピオンズリーグ予備予選プレーオフでイスラエルのチームと対戦した際、セルティックのサポーターが試合中、パレスチナの国旗を掲げたことに対する措置である。実は、UEFAが最近の数週間で、パレスチナ旗を掲げたことを理由にクラブに制裁を課した事例は他にもある。スコットランドのセント・ジョンストンFC、アイルランドのダンドークFCにも制裁を加えている。

驚くべきことだが、これらのチームのサポーターたちの出自は、パレスチナあるいはアラブにあるわけでもなく、イスラム教徒でさえない。しかし彼らの心情は、おそらく過去におけるそれぞれが関わったことが理由であろうが、苦難のさなかあるパレスチナ人民に対する共感にあふれている。また、おそらくはシオニストが支配するメディアの害毒に毒されていないのであろう。自分たちのクラブが制裁を課せられる可能性があることを承知していながら、彼らはパレスチナの人びとの苦境を見て見ぬ振りをしている周囲に対し、自分たちの気持ちを表明することをためらおうとはしなかった。

3チームはそれぞれUEFAから1万8000ユーロの罰金を課せられた。たいした額ではないと思われるかもしれない。これはイングランドのプレミアリーグの平均的な選手が受け取る報酬額程度である。だが、とりわけアイルランドリーグのチャンピオンチーム(ダンドークFCのこと)にとって、巨額の罰金なのである。というのも、同リーグの優勝賞金は10万ユーロを超えないのだ。

この3チームはUEFAに対し、罰金の理由に関する詳しい説明を求めている。仮に、試合中多くの旗を掲げたことが罰金の理由だというのなら、ヨーロッパのクラブのあらゆるスタジアムでは、様々な国の国旗や企業の旗でいっぱいになっているではないか。また、そのときのシュプレヒコールの内容が問題だというのか。しかし、スコットランドやアイルランドのサポーターたちは、「イスラエルに死を」と叫んだわけでない。「パレスチナに自由を」と高らかに求めたに過ぎないのだ。

パレスチナサッカー連盟はFIFAに承認されている。国連ではパレスチナ旗が掲揚されている。UEFAの言い分は、スタジアムにおける「政治的シンボル」の使用を禁じる規定に抵触するということなのだろうか。だが、私は、オランダのアヤックス・アムステルダムが、国内外の試合においてイスラエルの国旗を掲げたことを理由に制裁を加えられたという話を一度も聞いたことがない。イスラエルとは関係のない試合であるにもかかわらず、観客席でイスラエル国旗を掲げたいかなるクラブも、そのことを理由に制裁を課せられたことはない。またさらに、昨年11月に起こったパリの連続爆破事件の直後に行われたフランス対イングランドの親善マッチの際、スタンドにはフランス人を支援し、テロ行為を反対する政治的なスローガン、プラカード、シュプレヒコールであふれていたではないか。われわれはこのとき、どれだけフランス代表に同情を寄せたことであろうか。しかし、FIFAもUEFAも常々スポーツに政治を持ち込んではならないと言っておきながら、(こういった政治的なスローガンなどを)邪魔立てすることなく受け入れたのである。

パレスチナに出自を持つバシーナ・ハマドさんというアメリカ人女性が、アメリカのヒューストン・ディナモ・スタジアムで行われたある試合でパレスチナ旗を掲げたことで逮捕された。治安当局によって、その旗を掲げたことを「人種差別主義のしるし」だと見なされたためである。だが彼女は家族と一緒にホンジュラス対イスラエルの試合を観戦しに来ただけだったのである。ここにキーワードがある。

奇妙なことだが、世界中でパレスチナ旗とそれ以外の国旗とを区別する動きが起こっている。パレスチナ旗は「自由のシンボル」なのである。人びとはおのおのの国で、傲慢な連中の鼻先に、誇りを持ってこの旗を掲げているのだ。かつてわれわれが、チェ・ゲバラやネルソン・マンデラの写真を掲げて成長していったように。

われわれは、世界中が慈しみあうような社会を夢見たことはない。セルティックやセント・ジョンストン、そしてダンドークのサポーターたちは、今後も自由に関わる表現活動を続けていくことであろう。パレスチナ旗は徐々に、一部の人たちにとって恐怖の存在となりつつある。その旗をテレビカメラやカメラマンのレンズから締め出すことで、占領者の連中は安らぎを得ることになるのだろう。

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