シリアの躍進を反体制派地域住民はどう見たか

8月31日に行われたワールドカップアジア最終予選で、シリアがカタールに快勝して以降、アラビア語各紙では、シリア代表への注目がぐんと高まっています。おそらく来月(2017年10月)のオーストラリアとのプレーオフが終わるまで続くものと思われます。

興味深い記事も多くあり、ぼくの現在のアラビア語読解能力では全然追いつきません。今回紹介する記事ものその一つ。ロンドンで発行されている「アルクドゥス・アルアラビー」が2017年9月9日で報じたفي سوريا… «فرح لا يوصف» بعد بلوغ الملحق القاري | القدس العربي Alquds Newspaperです。

この記事で印象的なのは、アルカーイダ系武装組織が支配している地域でも、シリア代表の躍進に歓喜する住民がいるということ。というか、すなおな喜びをメディアで語る人がいるということです。

記事に出てくる若者にどういう形で取材したのか(現地取材か電話取材か)、判然としませんし、おそらく仮名での掲載だとは思いますが、住民の本音に触れることができた感じです。

また、この記事に掲載された写真を見ると、シリアがいかに世俗的な国であるか確認できて、ほっとさせられます。


元記事URL http://www.alquds.co.uk/?p=787180

 

「うれしくて言葉にならない」 シリア、アジアプレーオフ進出

掲載紙:アルクドゥス・アルアラビー
掲載日:2017年9月9日

(文中*は訳注 小見出しは訳者による)

(http://www.alquds.co.uk/?p=787180より)

ダマスカス(アルクドゥス・アルアラビー):

イランと引き分けたことで、ストレートでの出場権を逃したものの、シリア国民は、各自の政治的立場に関係なく、代表チームがアジアプレーオフに進出し、史上初となるワールドカップ出場のチャンスを得たことを祝った。政権支配地域でも反体制派支配地域でも祝宴は行われた。

歓喜のサポーターが埋め尽くす

ワールドカップアジア予選最終節で、シリアはホームのイランと対戦し、2対2で引き分けた。33万人以上の命を奪った血みどろの紛争に何年にもわたってさらされているシリアだが、イランとの試合に勝てば、ストレートで出場権を獲得していた。ところが、その機会を逃したというのに、シリア国民は歓喜を爆発させた。先の火曜日(*2017年9月5日)に行われた試合が終わると、ダマスカスやその他の都市では、市民が代表チームを応援するチャントを叫び、祝った。カフェや広場は、国旗を持ったサポーターで埋め尽くされた。通りは、国歌などをうたいながらパレードする車の列であふれた。

ダマスカス旧市街のカフェで、夫と娘と一緒に試合を観戦していたヤラ・フナーさん(35歳)は、「うれしくて言葉になりません。シリアにはこのまま勝ち続けて欲しいです」と話す。

ヤラさんは国旗を首に巻きながら、家族とともにケーキを切るため、試合終了を待った。そしてこう続けた。「シリアのプレーオフ進出と娘の誕生日をこれからお祝いします」

イランとの一戦は、通常以上に注目されていた。バッシャール・アサド政権にとって、地域で最も強力な同盟関係にあり、しかもすでに本大会出場を決めているイランとの対戦となったからだった(*おそらくシリアが有利になるよう試合が操作されれるのではないかといううわが流れていることを言っているのだと思います)。

シリア軍兵士サイード・アライジーさん(34歳)は、「イランのホームでのシリア代表のすばらしいプレーをみんな喜んでいます」と話し、下は軍服、上は代表チームのユニフォームをまとったこの兵士はこう付け加えた。

「われわれは政治的にはイランと同盟関係にありますが、これはサッカーなんです。イラン選手は全力を出し切ったし、われわれはイランのホームで彼らと互角にたたかいぬきました」

通りから人、車が消えた

試合開始の数時間前、ダマスカスの各通りから通行人や車がほぼ完全にいなくなった。ほとんどの商店はシャッターを閉め、カフェやレストランは客でぎゅうぎゅう詰めとなった。いくつかの公園では、厳重な警備のもと、試合観戦のために巨大スクリーンが設置された。地面に数千もの市民たちが座り込んだ。ダマスカス西部メッゼ・オートストラード沿いのジャラー公園には、3000人以上が集まっていた。彼らの多くは、代表を応援するため、赤と白のシャツを身につけ、「シリア…シリア」と叫んでいた。

ダマスカス西部にあるウマイヤド広場でも同じ光景がくり広げられていた。巨大スクリーンの前にサポーターたちが座り込んでいた。商業と経済を専攻する大学生アムジド・ハリーリーさん(23歳)もその一人だ。

「シリアの情勢は次第によくなっていますし、これからもそうですよ。とくに、今日、われわれはデリゾールで勝利しましたしね」とハリーリーさんは話す。この少し前、2015年の初め以来、シリア東部に位置する都市デリゾールに対してイスラーム国が続けていた封鎖を、シリア軍が解除したところだった。

シリアの複数のテレビ局が試合を中継した。国営テレビ局は、ダマスカス、ホムス(シリア中部)、アレッポ(同北部)、タルトゥース(同西部)の都市の広場とカフェでの中継を行った。

サッカーが国民を一つに

政権支配地域、反体制武装勢力支配地域、あるいはジハード主義勢力支配地域にかかわらず、サッカーによってシリア国民が一つになった。2011年3月に紛争が勃発して以来初めてのことだ。反体制武装勢力支配下にあるダマスカス県の東グータ地方のある農園では、サッカー好きの若者たちが試合を観戦した。

アブー・バドルさん(30歳)は、「もちろん、ぼくらはシリア代表が勝つことを願っていましたよ。たとえここが反体制派あるいは政権側の支配地域だったしてもね。代表チームはシリア全体の代表なんですから。ワールドカップの出場権をかけたプレーオフでのシリアの勝利を願っています」と話し、こう続ける。

「ぼくは以前から代表を応援しています。…イランは強いと言われているけれでも、シリアもすばらしいプレーをしてくれました」

ハーシム・シファーヤさん(28歳)は反体制派を支持しているが、そんな若者にとってシリア代表は、「様々な問題はありますが、代表はシリアそのものなんです」と言い、「ワールドカップに出場し、ぼくらとシリア全土に大きな喜びを与えてほしい」と期待している。そして、

「様々な問題はありますが、もしシリア代表が出場権を獲得すれば、われわれはテロリストではないということを世界に向かって示すことができます。とても大きな問いを投げかけることになると思います」と付け加えた。

代表チームは何を代表しているのか

シリア北西部イドリブ県はその大半をジハード主義武装勢力(*アルカーイダを出自とするシャーム解放機構)が支配する地域だ。同県ビンニシュ市に住む若者オマル・ハージ・ハムダーンさん(21歳)は、試合結果に喜びをあらわにしている。彼は町のアイスクリーム屋で友人たちとともに試合を観戦していた。

「今日は最高な気分だよ。この引き分けは勝利に値するからね」と話し、こう強調する。

「スポーツは政治とは関係ないね。アサド政権に従属しているから代表チームを応援しないというやつもいるけど、それは間違っている。代表はシリアためにたたかっているんだ。アサドのためじゃない」

だが、政治とスポーツを分けて考えることを拒否する人たちもいる。試合を見なかったというアフマド・インダーニーさん(23歳)は、「代表チームは体制を代表しているんです。選手たちのユニフォームに付けられた旗は、体制派であることを表している。その旗は、戦場で掲げられているものなんだから」と話し、こう付け加えた。

「ぼくらは代表チームに反対しています」

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