前回に続き、スタジアムで掲げた横断幕の内容を理由に、シリアサッカー連盟から処分を受けたクラブのサポーター集団に関する記事の紹介です。
ティシュリーンというチームのサポーター軍団「ウルトラス・イーグルス」。彼らの熱量は相当なものです。ガラガラが常のシリアのスタジアムですが、このチームのホームゲームだけは観客でぎっしり埋まっています。
紹介する記事にもある通り、「ウルトラス・イーグルス」が掲げる目標自体は立派なもので、実際のところある程度まで目的は達成しているのではないかと思います。
ただし、ネットにアップされている動画を見ると、あまり近寄りたくない殺伐とした雰囲気をスタジアムに作り出しています。
今回の記事、背景事情についてあまりわかっていないせいか、よく理解できない箇所がありました(最後の2段落がとくに。直感的に日本語化してみましたが、適切かどうか)。
元記事URL:
https://www.enabbaladi.net/archives/228112
「ウルトラス・イーグルス」…スポーツ連盟に対峙する稀有な存在
掲載紙:イナブ・バラディー
掲載日:2018年5月13日
(小見出しは訳者によるもの)
シリア・プレミアリーグに所属するティシュリーンSCのサポーター集団は、シリアサッカー連盟が、同クラブに科した処分の発表を受け当惑している。処分は、先月(2018年4月)下旬の試合で、ティシュリーンのサポーターがシリアスポーツ連盟を「中傷」したとして下されたものだ。
シリアスポーツ連盟のムワッファク・ジュムア会長は、地元メディア向けに発表した声明の中で、「私はウルトラスと呼ばれるサポーター集団の存在を受け入れません。彼らはわが国のスポーツ文化や、スポーツ構成員とは無縁の集団だという見方を支持します」と述べている。
シリアの応援スタイルを変革する
「ウルトラス・イーグルス」はラタキア市で活動をしている。熱狂的なサポーター集団であり、スタジアムでチャントなど統率の取れた応援を組織することを目的としている。
リーグの試合における「ウルトラス」の影響力は増しつつあると言われている。シリアでの戦争の影響で一時活動を停止していたが、広範なファンの動員を実現している。
ティシュリーンの「ウルトラス」は、2009年に活動を始め、最近になって活動を復活、スタジアムでこれまでの「ある意味バラバラだった」応援の概念や方法を変える活動を行っている。また、スタジアムの観客席を暴力的なものから楽しく、かつ一体感のある空間に変革しようとしている。
「ウルトラス・イーグルス」の応援リーダー、アリー・ユースィフ氏は、ウルトラスの活動の目的について、どんなときでもチームを応援すること、そして、プロ化にふさわしいように、シリアの応援の概念を変えることにあると、シリアのメディアに語っている。
ユースィフ氏によると、ウルトラスのメンバーは1000人に達しており、その数はSNSを通じて日ごとに増え続けているという。
騒動絶えないスタジアム
ティシュリーンのこのサポーター集団、シリアでは唯一クラブの管轄下にない存在なのだが、6部門、すなわち財政、総務、「ティフォ」(看板や横断幕制作)、発煙筒、メディアおよびインターネット、「カボ」(スローガンやチャントの作成や応援の指導)で構成されている。
「ウルトラス・イーグルス」が掲げる横断幕の多くは、スポーツ連盟の担当者を不快にさせ、そのためクラブは処分されるなど厳しい状況に置くことになっている。
横断幕でチームのサポーターらが発した多くのメッセージは、物議をかもし、あちこちでトラブルを引き起こし、それらはSNSで拡散された。たとえば、ラタキア市で行われたイッティハード(*アレッポに本拠)との試合(*2017年7月4日開催)では、ティシュリーンのサポーターは次のような横断幕を掲げた。「ティシュリーンから…ここはアレッポだ」。この横断幕は「愛国心」を表現するものだったにもかかわらず、試合は平穏に終わることはなかった。普段からピリピリした関係にある両チームのサポーターによって、野次が応酬される事態を招いてしまった。
(*「ティシュリーンから…ここはアレッポだ」が、なぜトラブルの原因になったのかは不明です。この試合ではこれとともに、「ホムス…人生の首都」「殉教者に栄光を」と書かれた垂れ幕も掲示されていました。おそらくこの時期、シリア政権軍が次々に失地を回復していたことを喜ぶ意味合いだったのではと思うのですが、よくわかりません)
「ウルトラス・イーグルス」が公に掲げる目的はともかくとして、シリアのスタジアムでは試合のたびごとに、騒動を引き起こしている。なかには、人種差別的なものや、対戦チームのサポーターを侮辱するケースもある。彼らは、怒りや鬱屈したエネルギーの発散を、熟達した応援スタイルで、スポーツの応援にぶつけようとしているのだ。