今回紹介する記事は、シリアのホムスとハマでもリーグ戦が開催されるようなったことを伝えるAFPの配信記事です。エジプトの独立系新聞と言われるアル=シュルークが2016年12月22日付けで掲載したものです。
بطولة سوريا لكرة القدم تعود الى حمص وحماة للمرة الاولى منذ 2011 – بوابة الشروق
先月下旬(2016年12月)、シリアのトップリーグにあたるプレミアリーグ2016/17が開幕しました。シリアでは激しい戦争のさなかでもサッカーの国内リーグが開催されてきたんですが、治安の問題から、試合開催地は比較的安全とされるダマスカスとラタキアの2都市に限られていました。それが今シーズンからホムスとハマでも開催されるようになったとのことです。
ただし、シリア人の知人の話では、安全が保たれていると言われるところでも、基本的なインフラ自体著しい支障が続いており、また、人口の約半数が国内外に避難しているという状況ですから、多くの人にとってとてもサッカーどころの日常ではないとのことです。だいたい停電でテレビが使えないことも多いそうですから。
それでも、代表の試合やヨーロッパサッカーのビッグマッチになると、カフェやレストランに若者を中心にファンたちがつめかけていると言っています。
サッカーの試合が開催されたことだけを取り出して、この国の治安状況を断定的に述べることはできないとは思います。しかし、リーグ戦の開催地が増えたということ自体、治安状況が改善に向かっていることを示すものだと考えて間違いないでしょう。喜ばしいニュースだと思います。とくにホムスは、ついこの間まで最大の激戦地と言われ、中心部の大半が破壊され尽くした映像を目にしていただけに、驚かされます。
この記事からは、観客の入場をどれだけ認めているのかについてはわかりませんが、開催が悲惨な事件、事故を招くことがないよう願わずにはいられません。
かつて、シリアでリーグ戦が続けられていることについて、反体制派が、FIFAからの分配金目当てに選手を危険にさらしていると批判している記事を紹介したことがありました。今回の記事を読むと、分配金は依然凍結されているようですね。
なお、開幕戦の試合結果は次の通り。
アル=ムハーファザ対アル=マジド 0−0
ティシュリーン対ジャバラ 0−0
アル=タリーア対アル=ワスバ 1−0
アル=カラーマ対アル=ナワーイル 0−0
アル=シュルタ対アル=ワハダ 1−3
アル=イッティハード対アル=フトゥーワ 2−1
アル=フッティーン対アル=ジャジーラ 2−1
元記事URL:
ホムスとハマにサッカーが帰ってきた
2011年以来初めて シリア
2016年12月22日
アル=シュルーク(エジプト)
ダマスカス AFP
サッカーのシリアリーグの開幕戦が金曜日(2016年12月23日)に行われる。5年前から続く紛争のため試合開催が中止となっていたホムスとハマの2都市でも、今シーズンからリーグ戦が復活する。
シリアの国内のトップリーグ、第46回プレミアリーグは、2011年3月にアサド政権と反体制派との紛争勃発前に定められていた方式、1リーグ制で開催される予定だ。
同リーグは過去数年間、2リーグ制で行われ、試合はダマスカスとラタキア(シリア西部)に限って開催されてきた。両都市では、31万人が犠牲となっている戦争の中でも治安がおおむね保たれている。
シリアサッカー連盟の複数の担当者は、ホムスとハマでの試合の復活は、両都市の安全が確保されたことにより可能となったものであると強調している。
同連盟のサラーフ・ラマダーン会長は、AFPに対し次のように話している。
「われわれは過去数シーズンにわたって、リーグ開催方式の変更を余儀なくされ、安全が確保されているダマスカスとラタキアで2リーグ制で試合を行ってきました。
シリアの他の都市でも試合が開催できるよう治安が回復することを待ち望んでいました。そしてようやくホムスとハマでの試合開催の許可が治安当局から得られました。以前の方式でのリーグ戦の復活はわれわれを勇気づけるものです」
シリアでは2011年、同国第3の都市ホムスをはじめとする多くの地域でアサド大統領体制に対する抗議活動が起こった。政権側に抑えられた抗議活動は武装闘争に転じた。
反体制武装勢力はホムスの諸地区を支配したが、2014年5月以来、政権側は、武装集団が籠城するアル=ワアル地区を除いてほぼ完全に同市を制圧した(訳注:アル=ワアル地区も2016年9月停戦合意が成立。武装勢力は投降。投降を拒否する戦闘員とその家族はイドリブ県に退去した)。
一方、ハマでは郊外では戦闘が行われ、反体制派が郊外の村のいくつかを支配しているが、ハマ中心部では騒乱はほとんど起こっていない。
しかし、今後もその他の都市での試合開催、とりわけ木曜日夜(2016年12月22日)、紛争勃発以来、政権側にとっての最大の勝利としてシリア軍が完全奪還したと発表したアレッポ(シリア北部)においては、治安面から難しいとみられている。
アレッポを本拠地とするアル=イッティハードとアル=フッリーヤの2チームは、代替のホームとしてラタキアを、デリゾール(シリア東部)を本拠地とするアル=フトゥーワ、ハサカ(シリア北東部)を本拠とするアル=ジャジーラはダマスカスをそれぞれ選んでいる。
ラマダーン会長は、連盟は試合開催にあたっていくつかの困難に直面していることを明らかにしている。たとえば、
「補修を必要としているスタジアムの費用が巨額に上ることです。FIFAが課した制裁のため、われわれ連盟はたいへんな資金不足に悩まされています。FIFAからの連盟への年間分配金が凍結されており、その額は500万ドルを超えているんです」
トッブリーグには16チームが参加し、シーズン終了時の成績でうち4チームが2部リーグに降格、2部リーグからは2チームが昇格する。2017/18シーズン(来シーズン)以降は、トップリーグは14チームでの構成となる。
リーグ戦の優勝争いは、昨シーズンチャンピオンのアル=ジャイシュ、続いてアル=ワハダ、アル=イッティハードにしぼられるとみられる。
アル=ジャイシュのリーグ戦最初の2試合は、土曜と水曜にレバノンで行われるアラブクラブ選手権予選のアル=ジャウィーヤ(イラク)戦との関係で行われない。
金曜日には4試合が行われる予定。ダマスカスでアル=ムハーファザ対アル=マジド、ラタキアでティシュリーン対ジャバラ、ハマでアル=タリーア(ハマが本拠)対アル=ワスバ(ホムスが本拠)、ホムスでアル=カラーマ(ホムスが本拠)対アル=ナワーイル(ハマが本拠)の対戦がある。
土曜日には、ダマスカスでアル=シュルタ対アル=ワハダ、ラタキアでアル=イッティハード対アル=フトゥーワ、アル=フッティーン対アル=ジャジーラの対戦がある。アル=ジャイシュ対アル=フッリーヤ戦は(訳注:上記のアラブクラブ選手権予選の関係で)2月6日に延期となる。