移動手段は貨物船というチームも 戦火の中参加するパレスチナ、イエメン、シリア

アジアカップ2019がUAEで開幕しましたね。開催国とバーレーンとの開幕戦を(ロングハイライトで)見ましたが、なんかひどいレベルの試合だったように感じました。とくにUAEの方は開幕戦でかなりプレッシャーを感じていたのか、一昨年ワールドカップ予選で日本と対戦したときの面影はなかったように思います。これがアジアチャンピオンを決める大会のレベルとすると、ちとつらいです。

さて、今回の記事も同大会に関するもの。国内が困難な状況のさなか、参加しているパレスチナ、イエメン、シリアに関する内容です。

記事内容から考えて、本日深夜(2019年1月7日未明)に行われるグループBのパレスチナ対シリア戦前にアップしたかったので、ギリギリ間に合いました。

内容的には、この3国の現状について概略的にでもご存じの方にとっては、目新しい情報はないかもしれません。ただ、イエメン代表がロシア・ワールドカップ予選の際、国内が封鎖されていたので、国外での試合会場に向かうため、やむなく貨物船を移動手段に使っていたという話には驚かされました。

今後も何回か、アジアカップ関係の投稿が続くと思います。

なお、今回の記事でどうしても意味がつかめなかった語句がありました。قلّة الإمكانيات という言い回しです。本文中3回も出てきます。

辞書的には、「可能性の欠如」「能力の不足」といった意味になると思うのですが、それではさっぱり本文での意味が通りません。仕方ないので、文脈から考えて、「物的支援体制の欠如」という日本語に置き換えています。大きくは外していないとは思いますが、はて、どうでしょうかね。


アジアカップ:パレスチナ、イエメン、シリアとともに

掲載紙:マヤーディーン
掲載日:2019年1月2日
執筆者:ハサン・ザイン・ディーン
URLhttp://www.almayadeen.net/news/sports/925961/كأس-آسيا–كلنا-فلسطين—-كلنا-يمن—-كلنا-سوريا

(*は訳注 小見出しは訳者によるもの)

数日後に開幕するアジアカップで、見るものを引きつけ、支援と支持を得るに値する3つのチームがある。この3チームは、祖国が占領され、攻撃され、あるいは戦時下といったある種共通の特徴を有している。だが、彼らは、物的支援体制の欠如という他の代表チームとは異なる状況下にありながらも、夢を抱き続け、挑戦し、格闘してきている…。以下、パレスチナ、イエメン、そしてシリアに関する話である。

パレスチナ、イエメン、シリアの代表チームをとりまく状況は他のチームとは異なっている http://www.almayadeen.net/news/sports/925961/كأس-آسيا–كلنا-فلسطين—-كلنا-يمن—-كلنا-سورياより

アジアカップに出場する各代表チームは、それぞれ祖国の人々から応援を受けることになろう。それはごく当然のことである。

だが、ある種共通の環境のさなかにある3つの代表チームは例外だ。うち2チームは、祖国が攻撃、封鎖、抑圧され、物的支援体制の欠如におかれている。残りの1チームは母国が大規模な戦争と暴力にさらされている。この3チームは、アジアカップの出場権を獲得したことで、大勢の人たちから支持、支援を受けていることを特徴としている。

スポーツと選手たちも標的にさらされて

彼らの国を攻撃するものたちは、スポーツ関連の施設も標的にしてきた。

よく知られていることだが、パレスチナの人々を占領下におくイスラエルの攻撃の矛先は、スポーツ施設も含んでいた。とりわけガザ地区においては、爆撃によるスタジアムや施設の破壊はくり返し行われている。また、大勢のスポーツ選手たちが殺され、負傷し、逮捕されている。試合に出場するための移動も制限されていることは言うまでもない。

イエメンの状況も似たようなものだ。サウジアラビアが主導するアラブ連合軍の攻撃は、この国のスポーツインフラを破壊した。首都のサナア政府(*フーシ派)の青年スポーツ省によると、攻撃が開始されてから3年経過するまでに、直接的な爆撃は13県の87のスポーツ施設に及び、スポーツ分野の損害はすでに9億ドルを超えているという。

シリアでも同様だ。テロリスト諸集団は、スタジアムなどのスポーツ施設への攻撃をちゅうちょしなかった。とくにアレッポ市では甚大な被害が生じた。もちろん多くの選手たちも殺害され、負傷した。

移動手段は貨物船

パレスチナ、イエメン、シリアの各代表チームは、ホームで試合を行うことができないという点でも共通している。理由は、パレスチナは国内が占領されているため、イエメンは侵略を受けているため、そしてシリアは戦争のためだ。ただしシリアの場合、国内の治安は回復し始めているのだが。

だから彼らは国外で、出場権獲得を得るための準備をととのえ、試合にのぞんできた。それは苦心や疲労をともなうものとなり、また、サポーターたちから応援を受ける機会も失うことになった。

また、選手たちの移動にも困難が生じている。パレスチナでは占領軍により移動が制限されており、イエメンでも苦難をともなっている。

たとえば、2017年、イエメンは陸路、空路ともに封鎖されていた。そのため、代表チームは、アジアカップ予選を兼ねたロシア・ワールドカップ予選の試合にのぞむにあたって、タイズ県のモカ港(*紅海沿いのアラビア半島南西部にある港町)から貨物船を利用するしかなかったのである。なんという感動的で、悲劇的な光景であろうか!

戦火と惨禍の中で獲得した出場権

言うまでもなく、パレスチナ、イエメン、シリアの各代表は、他の多くの代表チームが有している充実した物的支援体制、快適なトレーニング環境、休息といったものを有していない。

パレスチナ、イエメン両代表は、スポーツを標的としている敵と対峙している。シリアでも同じ環境下にあるが、国を打倒しようとしたテロとのたたかいに勝利し、治安は回復しつつある。彼らはあらゆる陰謀に立ち向かい、これを打ち破ってきた。

このような環境下、現実の中で、パレスチナ代表は、2015年に続き、2回目のアジアカップ出場を決めた(1回目の出場権は、当時開催されていたAFCチャレンジカップに優勝して獲得している)。イエメン代表は史上初の出場となる。シリア代表は、すでに、戦争と惨禍のさなかに、ロシア・ワールドカップ予選で、本大会出場目前にまで迫る成績を上げ、世界を驚かした。彼らは力強さと大きな野心を持ってこのアジアカップにのぞむ準備を整えている。

ところで、これら3代表の目標はどのようなものか。パレスチナとイエメンはグループリーグ突破をめざしている。シリアがめざしているのはさらなる上位進出である。もちろん、これらの目標達成は簡単なものではない。グループリーグの組み分けでは、パレスチナは、シリアとともにオーストラリア、ヨルダンと同グループに入っている。イエメンは、イラン、イラク、ベトナムが入ったグループである。

あなたの国の代表チームの次に応援しよう

アジアカップでは、当然のことながらそれぞれの国民は祖国の代表を応援することになろう。だが、この3チームは例外である。こんなスローガンを掲げようではないか。

「あなたの祖国の代表を応援しよう…そしてまたパレスチナ、イエメン、シリアの代表も応援しよう」

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